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2010.09.14

女神が舞い降りる時

「ライトノベル」という小説があるのをご存知だろうか。そのままの意味では「軽い小説」だが、高校生位までの若い読者をターゲットに書かれた小説のようだ。ただし、本当にライトノベルといったものがある訳ではないし、そう言われる小説を大人が読んで何か問題がある訳でも当然ない。ただ、表紙や挿絵に、漫画風の、可愛い少女の「ちょっとエッチな」絵が描かれ、いい大人が電車の中で読むのは抵抗があるかもしれない。
ところが、このライトノベルと呼ばれるものに名作が沢山あるのではないかと思う。谷川流さんの「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズもそうで、私には、あれに芥川賞や直木賞が授与されないのが全く理解できないほどだ。

筒井康隆さんの「時をかける少女」は、日本の歴史的小説と言って過言ではないし、あれほど数多く、大作映画やアニメ映画を含め、映像化された小説もないと思うが、あれは元々、中学3年生用の学習雑誌に連載されたもので、今で言えば、ライトノベル中のライトノベルだ。それが、連載開始(1965年)や刊行(1967年)から40年以上経った今も愛読され、実際、素晴らしい作品と思うが、著者は、実は嫌々書いていたという話もある。

意外な経緯で生まれた傑作というものが時々存在する。
人類が続く限り愛唱されるに違いない「きよしこの夜」は、一介の音楽教師が一夜で作ったものだ。
また、世界の国歌の中でも名曲の誉れ高いフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の作曲者の名は、フランス国民ですらほとんど知らないが、これも日曜音楽家が一晩で作ったもので、彼の他の作品は何も残されていない。

池田満寿夫さんは世界的な版画家で、小説でも芥川賞作家であり、その受賞作品「エーゲ海に捧ぐ」を自ら監督を務めて映画化した。
ところが、池田さんは東京芸大の受験を3回連続失敗して諦め、生活のために、いわゆる「街の似顔絵画家」をしていた時は、同業者に、「下手過ぎて我々のイメージが落ちるからやめてくれ」とまで言われた。
そんな池田さんが、大きな絵画展の版画部門に出品した際、全く作品が出来ずに、締め切り間際にヤケクソで三角刀で銅版をひたすらひっかいて猛スピードで仕上げた作品が、海外の美術界の権威の目に留まって賞が与えられたのがブレイクのきっかけだった。

リラックスというか、無欲で臨むのが成功の要因と言えるような気もする。
ただし、「では、成功するには無欲でいけばいいのだな」と意気込むのは、救いようのない勘違いだろう。

筒井康隆さんが「時をかける少女」を、あまりやる気がなかった理由は、彼があまり好きでない学園ものだったということもあるかもしれないが、何と言っても、事実上中学3年生限定という読者対象の狭さが関係ないとは言えないだろう。
SF作家の平井和正さんにも、中学生用か高校生用だったかは忘れたが、昔、学習雑誌からの依頼があり、平井さんは「悪徳学園」という作品を書いたが、すぐに担当者が青い顔で返却に来たらしい。その理由は読めば分かる。昔、マイケル・J・フォックスがまだ健常者で人気絶頂の俳優だった頃、ホンダの乗用車インテグラのCMに出た時のコピーに「エッチにもほどがある」(「エッチ」は、ホンダのマーク「H」にかけた洒落)というのがあったが、この小説もエッチにもほどがあった。今の時代でも掲載不可能と思う。


【時をかける少女】
「時をかける少女」はもちろんだが、同時収録の「悪夢の真相」「果てしなき多元宇宙」が素晴らしい。

【時をかける少女】
「涼宮ハルヒの憂鬱」「灼眼のシャナ」で有名な人気イラストレーター、いとうのいぢさんの萌え画をカバーイラストにした新装版。同時収録作品は「時の女神」「姉弟」「きつね」になっている。

【悪徳学園】
平井和正さんの有名な「ウルフガイシリーズ」の番外編と言える。中学校が舞台。本文記事に書いたが、猥褻にもほどがある。ただし、私は、これを学習雑誌用に渡した平井さんが嫌いではない。戦後に中学生だった平井さんには、小説の中の話なら慌てることでもないのだろう。

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Comments

Kayさん、おめでとうございます。
新しい流れですね。遠くから期待しています。

僕もおかげさまで元気になって先日は模試を受けてきました。B判定でしたが、数学・生物・化学が思ったより出来ていて今年度は無理でも来年度は合格できるように勉強していこうと思っています。
9月から予備校の後期通常授業を受けようかと思ったのですが、腹痛やいらいらが少し心配なのでフレサテを取ることになりました。
ちょっと不安ですが、引きこもりから脱出できそうです。アドバイス、いろいろありがとうございました。
ところで、話は変わりますが、その人のことなど話してもいないのに自分のことを悪く言われたと思いこんで「生きていてごめんなさい」と泣きだす女性がいるのですが、苦手です。気にしなくていいですよね?

Posted by: しゅう | 2010.09.14 at 08:18 PM

★しゅうさん
ありがとうございます。
しゅうさんのコメントは、いつも良いタイミングです。私も丁度、ブレイクスルーを画策していたところでしてね。
理系科目が出来るのは良いことだと思います。ガチガチにならない限りは理系発想は良いことと思います。がんばって下さい。
その女性・・・
まあ、関係ないといえば関係ないのですが、私も多少似たところがあるなあ(笑)。
世の中、関係ないことは無いといえば無いのですね。まあ、とりあえずは、自分のことをしっかりしないといけませんけどね。

Posted by: Kay | 2010.09.14 at 10:59 PM

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