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2010.09.10

本物の騎士が優雅な理由

誰しも、一度は、コンピュータウイルスを作る者がいるから、ウイルス防御ソフトの開発、販売会社が成り立っているのではないのかと考えたことがあると思う。
ところが、その考え方に、奇妙な違和感や、何か釈然としないおかしな気持ちを持ったと思う。
しかし、いったい、なぜそんな感情を持つのだろう?
泥棒がいるから警察があるのは当たり前である。しかし、泥棒あってこその警察と言わないところに人々の幻想がある。

テレビのニュース番組で、裁判の話題では、裁判長や裁判官のいかめしい顔がよく映し出される。なんであんな尊大(高慢、横柄)な顔をするのだろうと思うが、彼らも、嫌でもそんな顔をしないといけないのだろう。
裁判官は罪人との立場の差を見せ付けなければならない。しかし、罪人あっての裁判官だ。裁判官の存在価値は犯罪者の存在に負っている。本当は両者は同等なものだ。少なくとも、裁判官も、場合によっては被告人席にいる可能性があると思ってこそ、良い裁判が出来るのではないだろうか。

スーパーマンは「自由と正義とアメリカンウェイ」のために戦うらしいが、それなら、「専制と悪とアメリカ的でない思想」あってこそ活躍できるのである。
仮面ライダーは、ショッカーに逢ったら、「いつもお世話になっております」と言った方が良い。そうしていれば、もっと良い世の中になるかもしれない。
「ゲキテイ」と言われて、それが、「サクラ大戦」というアニメ(ゲームから始まっている)の主題歌「檄!帝国華撃団」を略したファンの間での一般的な呼び方であるとは分からない人が多いだろうが、原作者(広井王子さん)自らの手によるその歌詞の中の「悪を蹴散らして正義をしめすのだ」という勇ましい歌詞は良いのだが、それは1番で、同じ部分が2番では「悪を滅ぼして正義をしめすのだ」となる。しかし、悪を滅ぼしてはいけない。悪を滅ぼせば正義も、そして、世界も滅びる。悪に負けてはいけないが、限度を知らないといけない。
「悪は滅ぼすもの」というのは、現代人に刻み込まれた極端で硬直した思想であり、幻想、洗脳と言って良いものだ。
だが、夜を滅ぼして昼がないように、波底(波の谷)がなければ波頭がないように、悪がなければ正義もない。
「セーラームーン」は、「愛と正義のセーラー服美少女戦士」だったが、原作では、セーラームーンは、これまで戦ってきた敵は自分のきょうだいのようなものと悟る。彼らが自分に引き寄せられたのは、愛する人を求める気持ちと同じだと気付き、愛おしさすら感じる。アニメの方では、「悪の根源たるカオスは、本来あるべき場所に戻った。それは人の心の中」と言うにとどめたが、それでも大進歩である。後の舞台(ミュージカル)では、原作通りのことが言われたが、見ていた小さな子供たちの意識の底に残っただろうか?

昼は夜を伴い、波頭は波底を伴い、愛は憎しみを伴い、快楽は苦痛を伴い、幸福は不幸を伴うように、正義は悪を伴う。
武士道というのは、太平の世でありながら、働きもせず厚遇される武士の後ろめたさが生み出した奇妙な道徳だという考え方があるらしいが、西洋の騎士道というのは、高貴さの中にも遊び心を持ち、悪は叩くが、やり過ぎは品格のないこととして戒めるところがあると思える。テレビで見る裁判官の顔は、どう見ても騎士の顔ではない。騎士の本当の優雅さは、この世の真の姿をそれなりに悟った大人の雰囲気なのだろう。


【半神】
わずか15ページの中で、愛と憎しみが全く同等であることを劇的に示した萩尾望都さんの傑作漫画。野田秀樹氏により舞台化され好評を博した。

【名人伝】
弓道を極めた名人は、「善と悪の区別が付かない」と言った。世間を超えた者の姿を見てどう感じるかは読者次第である。

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Comments

今年の我が田の稲穂はこれまでになく感動的であります。それにつけても本日の貴方様の文・・・素晴らしい・・・

Posted by: 九州の百姓女 | 2010.09.10 at 08:20 AM

★九州の百姓女さん
稲穂は良いですね。金色に照り映えるのかなあ。
ありがとうございます。存在自体が美しい人ですから・・・って、誰が・・・?

Posted by: Kay | 2010.09.10 at 10:58 PM

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