寄るなら本物の大樹
誰もが大好きな「幸運」は、辞書には書かれていないかもしれませんが、「思いもよらない良いこと」のはずです。
この、「思いもよらない」という部分に注意しないと、幸運の原理や、それを得る秘訣が分かるものではありません。
つまり、幸運というのは、自分の意志や力ではなく、他者の意志や力の働きによりもたらされるものです。
あなたに幸運をもたらす、身近で分かりやすい存在は、父親やボスや王様ですが、彼らは気紛れですので、昔から人間は神様まで気紛れだと思ってしまい、機嫌を取るのに必死になることがよくありました。
しかし、人間でも、本当に立派な父親やボスや王様は気紛れではありませんので、ましてや、神様が気紛れなはずがありません。
絶大な権力や財力を持つ父親が、彼の子供にとても大切なことをさせる時、その子供がそれを行うならば、父親はその強大な力でもって、ありとあらゆる援助をして子供を守るはずです。子供は、自分がどうやって援助されるかは、父親にまかせればよく、自分は知る必要がありません。その援助は、思いもかけない方法で、適切なタイミングでもたらされます。
これが幸運の原理です。
イエスや黒住宗忠やラマナ・マハルシは、神様に全てまかせれば、万事うまくいくと教えましたが、「全てまかせる」とは、完全に信頼するという意味ですが、それがなかなか難しいのです。
誰かがイエスに、「律法の中で一番重要なものは何ですか?」と聞きましたら、イエスは「神を一番に愛すること」と即答しましたが、それが難しいのです。凡人は、見えない神様より、見えるお金や美女やご馳走が好きなものです。
中国では、荘子は、「全てなりゆきにまかせ、自分で何かしてはならない」と常に強調しました。これも、イエスらの教えと同じなのですが、やはり実践は難しいのです。
「神様に全てまかせる」「神様を一番に愛する」「無為自然」というのは、仏教で言うなら、悟りを開くことです。簡単なはずがありません。
ところで、亡くなられたプロレスの三沢光晴さんが、入門テストで言っていたことを思い出します。
入門テストでは、大変な回数の腕立て伏せやスクワットが要求されますが、三沢さんは、「出来るかどうかではありません。やろうとする気持ちを見ています」と言いました。
上に述べたことで言えば、父親は、子供が、大切なことを達成した時に援助するのではなく、達成しようとしている時に援助するわけです。
このあたり、イエスも荘子も宗忠も、結果(達成)を重視しているように感じますが、ここらが、彼らの教えが難しく思われてしまう原因かもしれません。
そこにいきますと、法然やその弟子の親鸞、あるいは、彼らに影響を与えた中国の道綽(どうちゃく)やその弟子の善導(ぜんどう)らは、人間のそんな弱さをよく分かっていたし、そもそも、お釈迦様が一番よく分かっていたのですね。
それで、彼らは、人々に、悟りそのものではなく、悟りを開こうとする気持ちが本当は一番大切なんだと明かし、そのために誰でもできる簡単な方法を教えたのですが、それが、「南無阿弥陀仏」の念仏です。
悟りを開けば、自分自身が神や仏ですから、自分の力で何でも可能です。
しかし、悟りを開く気持ちさえあれば、今は、自分とは異なるもののように感じている神や仏が援助してくれますから幸運が得られます。
それを、「観無量寿経」というお経では、「仏(阿弥陀仏)を思念したり、その名を呼ぶ者のところに、菩薩(観音菩薩と勢至菩薩)が行き、いつも身近にいて最大の思いやりを持って世話を焼いてくれる。さらに、阿弥陀仏は、沢山の仏や菩薩を派遣し、VIP待遇で援助する」といった感じで表現しています。
それを絵にしたのが、阿弥陀二十五菩薩来迎図です。
念仏で悟りに向かうというと、絵空事のように感じるかもしれませんが、よく考えると、自然で論理的、つまるところ、当たり前とすら思えます。
岡田虎二郎は、岡田式静坐法で、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーは、TM(超越瞑想)で、悟りに向かう、簡単で確実な方法を教えたわけです。これらの実践者が幸運に恵まれることは、自然なことのように思います。
水野南北は、何も持たず、何も知らなくても出来、しかも絶対確実な方法として、食の慎みを教えました。これはまた後日述べますが、強力な方法であると同時に、例えば、ジェダイの騎士になるように危険な面もあるものです。
神仏にとって、人が悟りを開くことは、実に嬉しく喜ばしいことのようです。なら、我々が、歩みは遅くとも、そのための確実なことをやるなら、恵みが与えられないはずがありません。いかに凡人でも、少なくとも、悟りと反対のことは慎みたいものです。ただ、その悟りと反対のことをやる者やさせる者が多くなってしまいました。しかし、そのために災厄が起こるとしても、悟りに進む者には影響はないでしょう。
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