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2010.08.22

見えないものを信じる

8月13日にNHK-Bshi(NHKデジタル衛星ハイビジョン)放送で、「鬼太郎 幸せ探しの旅~100年後の遠野物語~」が再放送されていたのを録画していたが、昨夜、ようやく見た。
「ゲゲゲの鬼太郎」等の妖怪漫画で有名な水木しげるさんが、柳田國男の「遠野物語」で知られ、神話と妖怪伝説が今も息づく岩手県遠野市を尋ね、人々を取材し、自らの思想を語った内容が実に興味深い。

水木しげるさんは、「見えないものを信じたら、心が安定する」と言うが、これは実に重要なことなので、よければ是非憶えておいて欲しいと思う。
これだけ分かったら、この番組には最高の価値があったことになる。

「見えないものを信じると、心が安定する」ということについてお話したい。
心が安定するとは、不安がなくなるということだ。
逆に言えば、「見えるものしか信じないなら、心は不安定なまま」、つまり、不安に苦しむこととなる。
物しか信じない物質主義、経済主義の世の中で、人々は不安に怯え、不幸で惨めな状態なのである。
水木しげるさんが、見えないものを信じる力を決定的に悟ったのは戦争体験だ。21歳で二等兵(最下級兵士)として召集され、ニューブリテン島のラバウルに遠征。左腕を失うも、九死に一生を得て帰国した。
水木さんは、戦闘の最前線では、何かを信じないと、生きていられないと言う。これは、「正気でいられない」ということと共に「生き抜く力や幸運を持てない」という意味もあるのかなと思う。

山下久美子さんの1983年のヒット曲で、今も人気の高い楽曲である「こっちをお向きよソフィア」の2番の歌詞の、

見えないものを信じたら
向こう側へと抜けるカギが見えるわ
いつも隣にいるよだれか
おんなじ輝く瞳で Ooooh
(作詞は康珍化さん、作曲は大沢誉志幸さん)

という謎めいた言葉を、私は昔、カセットで1回聴いただけで憶えてしまっていた。
それほどの印象があったのは、私の中の高度な心が感応したからであろう。

さて、では、何を信じるかだ。
言ってしまうと、「何でも良い」である。

コリン・ウィルソンの「至高体験」に書かれているが、ロマン・ゲイリの「天国の根っこ」という小説がある(邦訳はないと思う)。
この中で、戦争中、ドイツの捕虜になったフランス軍の兵士は自堕落となり、規律どころか、人間性の崩壊の危機に陥る。その中で、フランス兵の隊長はわずかに残った権威の中で、奇妙な指示を出す。それは、「少女が1人いると想像しろ」だった。
それで十分だった。フランス兵は理性を取り戻し、規律は甦った。ただ、少女が1人いると思っただけで。
フランス兵の異変に気付いたドイツ軍将校は、フランス兵に「娘を引き渡せ」と通達する。彼女を売春宿に売り飛ばすと言うのだ(心理学に通じたドイツ軍将校は、からくりに気付いていた)。フランス兵は拒否し、隊長は独房に入れられる。隊長は独房で死ぬはずであったが、想像の力の偉大さ知る隊長の生命力は強力で、彼は生きて部下のところに戻った。

信じるものは何でも良いのだ。信じることさえできれば。
この小説のような、理想的な少女(フランス兵達も、そんな少女をイメージしたはずだ)でも良い。美少女はその神秘に見合った力を我々にもたらす。
理想的な想像の美少女と区別は付き難いが、天使を想像することだ。哲学者、宗教学者の鎌田東二さんは、塾の講師をしていた時、生徒の中に天使がいたのを見たという。それは想像かもしれないが、空想ではない。想像は現実である。

アニメ「ぴたテン」で、天使の早紗は、妹で落ちこぼれ天使の美紗に言う。
「天使も悪魔も、人の心の中にしか存在できないの」
だが、もっと正確に言うなら、人の心の中以外には、何も存在できない。もしあるとしたら、それは想像する主体だけである(それが神なのだが)。
「ぴたテン」の漫画(著者は、当時は「コゲどんぼ」と表記していたこげどんぼさん)で、魔界の男(クラウス・ローゼンバーグ)は、「天使も悪魔も何もしない。天使は見守るだけで、悪魔はほんの少し幸せの方向に背中を押す」と言う。
何もしないことが最大の力なのではないだろうか?
「攻撃は最大の防御なり。最大の攻撃とは無抵抗なり。つまり、何もしないのが一番強いのさ」
これは、英国のテレビドラマ「ダンディ2 華麗な冒険」の中で、ロジャー・ムーア演じる、英国公爵ブレット・シンクレアが言った言葉である。

何でもいいから、自分が信じられるものを持つことだ。そして、信じるものは、必ず自分で決めることだ。世間の信念や、親や学校に押し付けられた教義は絶対に信じるな。
それができれば、あなたに不可能はない。つまり、無敵である。


【総員玉砕せよ!】
水木しげるさんの、ニューブリテン島遠征の体験を元に描かれた戦争漫画。
軍部の腐敗、兵士達の本当の気持ち、米国軍との食料・装備といった境遇の格差、日本刀で戦車に切り込む日本兵。それをついに描いた水木さんの力作を是非読んでいただきたい。

【至高体験】
心理学者アブラハム・マズローとの交流の中で、コリン・ウィルソンは、人類を救うための「至高体験」を見つめ続けた。これが、ロマン・ロランの大洋感情と似た、あるいは、同じものであることも示唆される。
「アウトサイダー」を超える成果を盛り込んだ、極めて重要な書である。

【見える日本、見えない日本―養老孟司対談集】
養老孟司さんと、著名人達の対談集。水木しげるさんとの対談が非常に面白く、水木さんや妖怪の本質が現れていたように思う。
他にも、荒俣宏さんとの教養溢れる2人の対談は、決していやみでなく興味深い。
さらに、「唯幻論」の精神分析学者、岸田秀さんと、「唯脳論」の養老孟司さんの対決(別に論争してはいないが)は実に感慨深いものであった。

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