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2010.08.18

自我の死と真我の覚醒

死に至る直前に、大きな自己変革を起こした人の話がある。
それは、肉体的な死の場合が多いが、自我としての死の場合もある。しかし、突き詰めて考えれば、それはやはり、肉体の死ではなく、自我の死であることが重要なのだ。

英国の作家コリン・ウィルソンは10代のある日、まさに青酸カリを飲んで自殺しようとした刹那に精神に何かが起こり、一瞬で賢者に生まれ変わった。ただ、その時の彼はまだ若く、知恵を形にするのには経験と精神の成熟が必要だった。そして、彼は23歳の時に書いた「アウトサイダー」で、ほとんど一夜で世界的作家になった。
ラマナ・マハリシは17歳の時、家で退屈な学校の勉強の復習をしていた時、不意に死の感覚に襲われ、それが彼を一瞬で聖者にした。だが、彼も聖なる知恵を確立するために、長い沈黙の行が必要だった。

重病で、医者に余命わずかと診断され、絶望に陥っていた人が、ぼうっと自然の風景を眺めていた時、不意に聖なる光を感じ、病気は消え、まるで別人のように生まれ変わった。
23歳の無敵のプロボクシング世界ヘビー級王者ジョージ・フォアマンは、1974年に、既に盛りを過ぎた元世界王者モハメッド・アリとアフリカで対戦した。フォアマンは圧倒的有利と見られており、アリの挑戦は無謀と思われていた。予想通り、試合は序盤からフォアマンが攻勢で、アリは防戦一方だったが、アリはフォアマンの殺人パンチに耐え続けた。そして、反撃に転じたアリのパンチはフォアマンをマットに沈めた。この試合は、現在でも「キンシャサの奇跡」として知られている。尚、キンシャサは現在はコンゴ民主共和国の首都だが、当時の国名はザイールで、この試合も以前は「ザイールの奇跡」と呼ばれることもあった。自分の敗戦が信じられず、呆然自失となっていたフォアマンは、不意に不思議な光を見る。彼はしばらくはボクサーを続けるが、アリとの再戦を行わないまま、全盛期に引退。宣教師になる。しかし、38歳で現役復帰し、世界王座に2度挑戦するがいずれも破れる。だが、45歳でついにKO勝ちで世界王者に返り咲いた。

肉体的な死の危機が引き金となることもあるが、本質的には、自我の死、心の死というものが、時にはではなく、確実に大きな変革をもたらすと私は思っている。
また、臨死体験という、死の瀬戸際から生還した者の中にも、別人になったと言って良いほどの変革を見せた者もいる。
他にも興味深いのは、極めて異質な世界を体験した場合も、そのようなことになることだ。立花隆氏の「宇宙からの帰還」には、宇宙飛行士が、一度宇宙に出ると、以前と同じ人間であることはできないとまで書かれていたと思う。莫大な費用を払ってでも宇宙飛行を体験したい人が多いのも、直感的にそれを感じるからかもしれない。

我々も、自我の死、心の死を体験し、自己変革を起こすことは素晴らしいことであるに違いない。
ただ、それには、大人の自我を持っていることが必要と思う。上にあげたラマナ・マハリシは17歳の高校生の時に劇的な体験を持ったが、彼の場合は特別な才能を考慮すべきと思う。
自我が十分に確立されていない場合には、その崩壊は危険でもある。しかし、若い場合には、大人にとっては何でもないようなものに大きな感動を覚え、素晴らしい体験になるものである。邱永漢氏も、著書の中で「若いうちに子供を海外に連れて行け。大人になってからエッフェル塔を見ても、当たり前に見てしまう」と書いていたのが印象的だ。
まずは、自我を確立するまで、人としての修練を、家庭、学校、社会で行う必要があるだろう。だが、様々な理由により、普通の生活を送ることに困難があっても挫けてはいけない。全て、今いるその場で出来るに違いない。なぜなら、全ての出来事は神の恩寵であり、必然であって偶然ではないからだ。

ラマナ・マハリシ自身、自我、あるいは、心を消滅させる探求の道を教えている。
ただ、「私は誰か?」と自分に問い続けるのである。それで、心は、真の自己(真我)を残留物として残して溶け去る。
いかなる想いが心に起こっても、その想いを追いかけず、「この想いは誰に起こったのか?」と問う。答えは「私に」であるに決まっている。すかさず、「その私は誰か?」と問うのである。すると、想いは消え去る。これを根気強く続けることで、全ての想いは消滅する。それは心の死である。マハリシは、あらゆる想いを、城から出てくる兵士に例える。それらの兵士を一人ずつ倒せば、やがて城は我らの手に落ちる。探求は、1日中、たゆまず行う必要がある。

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