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2010.07.02

悪魔封じの意味

法然や親鸞は、「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えさえすれば、死後、極楽浄土に生まれることが出来ると説きました。
これは、心に安らぎを得、幸福になれるということです。なぜなら、人間の幸福とは、心の平和に他ならないからです。
そして、その意味する究極のところは、念仏を唱えれば仏になれる。つまり、悟りを開けるということになります。悟りを開くというのは、仏教における最高の目標でしょうが、それが念仏を唱えさえすれば達成できると言う訳です。

法然や親鸞の教えは、つまるところ、これだけです。
では、その根拠、つまり、なぜ、念仏を唱えさえすれば悟りが開けるのでしょうか?
これを探ると、とても面白いのです。
親鸞の場合は、「だって、私の先生の法然がそう言ったから」です。
それなら、法然の根拠が最も重要となりますが、それについて、法然は、結局のところ、「経典にそう書いてあります」と言っているに過ぎません。
ただ、経典というのは、そう素直に書かれているわけではありません。しかし、長年に渡る自身の研究や、先達の偉い僧侶の研究から、間違いなくそう言えますと、法然は言うのです。

これだけでは、どうも釈然としません。
それは、現代の情報を沢山持てる我々だけでなく、当時の知識層からも、そう思われたのだと思います。
ところが、それに対する法然や親鸞の弁明がまた、とても面白い。
「だって、私にはそれ以上のことは出来ませんから」
と言うのです。
「他のことをやる能力が私にあれば、そりゃ、やるかもしれませんよ。しかし、私は駄目なやつでしてね。これしか出来ないが、これなら出来るから、ただこれだけやるんです」
ということなのです。
ただ、これは庶民のために言ったと考えることができます。
法然も親鸞も、おそらく天才です。法然は幼い頃から神童の誉れ高く、親鸞も、極めて高度な著作を書くなど、実際は2人ともただものではありません。
しかし、その彼らが、「私には他には何もできません。唯一、私にだって可能な念仏をやるだけです」と言えば、誰もが安心して念仏にすがれるのです。

まだ納得できない人が多いでしょう。いえ、全く納得できないのが普通かもしれません。
しかし、大変なことがあります。
それは、法然や親鸞は、本当にそれを貫いたということです。
法然は1日6万回、念仏を唱え、死の直前、「私には念仏しかない」という断言と保証を書いて残したくらいです。
親鸞も、常日頃、それを証するような生き方をしていました。

確かに、念仏の教えというのは、良く言えば方便(便宜的手段)ですし、言ってしまえば幻想です。
しかし、人間というものは、幻想の中でしか生きられません。
なら、念仏という強い幻想を作って、全ての幻想をその中に封じ込んでしまえるのかもしれません。
これは、念仏だけではなく、あらゆる宗教的な教えや信仰といったものは、本当は、そのためにあるのかもしれません。
人間を支配する幻想が悪魔であるなら、「毒をもって毒を」、「目には目、歯には歯」とばかりに、「幻想には幻想」で、魔を持って魔を封じる悪魔封じは、そんな原理に則っているのだと思います。

後は、効率の問題です。
ラマナ・マハルシは、最大の幻想は、「私」という想いであることに気付き、それを絡め取ってしまうのが一番早いと確信したのだと思います。


【あるがままに】
ラマナ・マハルシの教えを読むなら、この本がお薦めです。
巻末には、マハルシが沈黙の行を行っていた若い時、質問者に砂の上に指で書いて答えた教えで、後にマハルシ自身、「真我を実現(悟りを開く)するために十分」と言った小文「私は誰か?」を収録しています。

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Comments

一日六万回の念仏には、驚きました。
ほとんど一日中、他の事はなにもせず、唱え続けていたのでしょうか?
そうすれば、確かに幻想世界の悩みも苦も、する暇ありませんね・・・・座禅や瞑想より良い方法でしょうか?

何事も、それをやり通す、ということは、大したことですね。
何か自分の正義を決めたいと、思います。

Posted by: セルリン | 2010.07.02 at 09:24 PM

★セルリンさん
私も、念仏6万回には驚きましたが、黒住宗忠は、神道の祝詞である「大祓詞」を1日千回以上唱えた時期があったようです。私は、1日120回で、7時間かかりました。1回に3分はかかります。
本当に集中してやれば、時間など超越するのかもしれないと思いました。
決めたら絶対やるというのは大事ですね。

Posted by: Kay | 2010.07.02 at 11:05 PM

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