劣等感を解消する
現代でも、一般庶民には、まだまだ西洋人コンプレックスというのはあると思うし、それは年齢が高いほど色濃いだろう。
昭和40年(1965年)に、漫画家の手塚治虫さんが初めてアメリカに行った時の訪問地が、アメリカ最大の大都市ニューヨークだったが、手塚さんの時代の西洋人コンプレックスというのは半端ではない。
手塚治虫さんは、昭和3年(1928年)生まれで、戦前から漫画を描いていた。戦争中、中学生だった手塚さんは予科練(少年航空兵)を志願させられたが、視力が悪くて合格せず、強制修練所でしごかれたようだが、とにかく、そんな時代の人だ。
手塚さんは当時の日本人の中では小男でもなかったようだが、昔の一般的な日本人的容姿で、しかもひょろひょろしていた。そして、戦後は、あらゆることでアメリカ人に対する恐怖感や立場の差を叩き込まれ、アメリカ人コンプレックスは非常に深いものだった。
それが、ニューヨークに行った途端、コンプレックスは解消した。
みんな背が低く、自分でも見下ろせるような小男がいくらでもいるし、みすぼらしい。そして、まともな英語を喋れる者がほとんどいなかった。スラング(方言)がひどいのだが、なまじ彼らは外国人を特別視せず、平気でスラングで話すので、さらにひどく感じたのだろう。
ただ、アメリカでもヨーロッパでも、手塚さんが驚いたのは、子供の教育が行き届いていることだった。もちろん、手塚さんが訪れたのは、ビジネス相手のそれなりの地位の人の家であったが、とりたてて豪邸でもなく、食事もごく普通だった。 しかし、それらの家の子供たちは皆、礼儀正しく、食事が終わると、すぐに宿題をして9時には寝る。テレビは、子供番組が終わると、自発的にスイッチを切る。
このあたりは、日本人が全く敵わないところだが、それは、手塚さんが亡くなって20年以上経つ今も全く変わらず、むしろ、格段に悪くなっている。
劣等感というものは、人間にとって恐るべき敵である。
劣等感をバネに努力して向上したという話もよく聞くし、それも良い部分もあるのかもしれないが、やはり劣等感は持つべきではない。実際は、劣等感の反動で努力して報われることは少ない。劣等感自体が不自然なものなのだから、それに支えられたものも脆いしいびつだ。
なぜ劣等感を持つかというと、形にとらわれているからである。言い換えれば、物質優先で、心より物に価値を置いているからだ。
ところが、ここに面白い事実が見出せる。それは、物質的、外面的なものに恵まれていても、それによる優越感が大きいほど、実は劣等感が強くならざるを得ないのだ。これは論理的にも確かである。なぜなら、優越感も劣等感も、自然に立脚した感情ではなく、幻想に過ぎないからだ。昔からある言葉で言えば、砂上の楼閣である。それで本当の自信が出来るはずがない。
実に、劣等感と優越感とは同じものなのである。
エマーソンは、内にあるものに比べれば、外にあるものなど取るに足りないと言ったが、それを学ばない間は無用な争いは無くならないし、富もうが貧しかろうが不幸である。
ジョセフ・マーフィーの潜在意識の法則は、精神の価値は物質の価値とは比較にならないものであることを示しているのであり、お金持ちになるかどうかは、実際は些細なことなのだろう。
そういう面に主眼を置かない限り、成功法則や成功哲学が人に幸福をもたらすことはないし、成果の方も出難く、成果があるとしても、一時的なものや、確固たる基盤のない脆いものしか得られないに違いない。
精神の価値は物質とは比較にならない。まずは、これを理解することである。
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