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2010.07.06

憧れと正義

アメリカで、1929年に漫画が発表され、1930年代からは映画、1960年代にテレビアニメが人気となり、2004年には3DCG映画にまでなった「ポパイ」の主人公であるセーラーマン(水兵)ポパイは、かつてアメリカのスーパーヒーローだった。
ポパイはほうれん草を食べると凄まじくパワーアップするという設定で、子供たちがポパイのおかげでほうれん草を食べるようになったと言われる。以前は、私もそれを良い方法だと思っていたが、今は違う。そんなに嫌なら食べなければ良いし、食べたくないのには何か理由があるはずだ。それは、お菓子の食べ過ぎとか、大人自体に偏食が多いとかで、そちらを先に解決すべきだろう。
ポパイが食べるなら食べるなんていうのは、一種の洗脳手法だし、ポパイが独裁者を崇拝すれば、そのような思想を子供たちに叩き込めるはずだ。そのようなことはいろいろな国で行われてきており、ポパイも戦争崇拝や敵国(日本やドイツ)への敵愾心(憤りや闘争心)を煽ることに一役買っていたと思う。もちろん、日本でも、同じような手法で子供たちを教育していた。現在は、露骨な国家崇拝や戦争賛美を行う国は少ないかもしれないが、根本はそう変わらないかもしれない。
日本では、戦後、鉄腕アトムは、国家や軍のためでなく、正義のために戦っていたが、それは一面的な正義であった可能性が高い。正義の名の下に、アトムは絶対的な暴力を振るって敵を葬った。

正義と言うのは、多分に個人的なものであることを自覚した方が良い。決して普遍的、絶対的正義などない。
CLAMPの「魔法騎士レイアース」のテーマは実は、この世に絶対的正義や絶対的悪はないというものだったようだ。
武内直子さんの「美少女戦士セーラームーン」では、セーラームーンの敵たちは、本当はセーラームーンの恋人のようなもので、かつては1つであったとされていることは、あまり知られていない。
タツノコプロの「キャシャーン」(1993)では、キャシャーンは、ブライキング・ボスとの最終決戦に及んだ時、「俺の憎しみのためにお前を倒す」と、戦いの動機が個人的であり、「俺は俺の手で新しい世界を創る」と宣言する。
同じタツノコプロの「新破裏拳ポリマー」で、ポリマーと戦って破れた女戦士は、最後にポリマーの命を救うと、「あなたの正義、もう少し見ていたい」と言って去る。
しかし、こういったものも、日本人の精神に変革をもたらすことはほとんどなかった。

ギリシャ神話には、デーメーテールという農耕の女神がいる。神々の王ゼウスの姉で、オリュンポス12神の1柱である大女神だ。
デーメーテールは、訳あって、老婆に身をやつして、ある国に入る。人々はみすぼらしい姿の彼女を蔑(さげす)み嫌うが、自分で水汲みをするこの国の王女達は彼女に親切にし、城に連れて行く。このような王女達の母である王妃も優れた人間で、乞食のような老婆の姿であってもデーメーテールを一目見て、にじみ出る気高さを感じて恐れ、自分の席をデーメーテールに譲るが、デーメーテールは応じない。デーメーテールはぶどう酒を勧められるがこれを断わり、挽いた大麦を水で溶かした飲み物を要求し、それを飲んだ。
デーメーテールとその娘コレー(ペルセポーネ)を信仰する人々は、この神話に基き、大麦の粉を溶かした飲み物を飲むようだ。
また、この神話の中で、デーメーテールやコレーは、神の食べ物であるアンブロシアや飲み物であるネクタールを長く絶ったことから、断食も行うようである。
実は、私も、朝、ブラックコーヒーを1杯飲んでいたが、はったい粉(大麦の粉)を湯で溶いたものに換えた。
さて、これはポパイのほうれん草のようなものか?
そうでもあるし、そうでもないとも言える。


【四つのギリシャ神話】
ホメーロス風の詩体で無名の詩人が書いた神々への讃歌の中から、デーメーテール、アポローン、ヘルメース、アプロディーテへの讃歌を取り上げたもの。
誰が書いたものかは分からないが、世界的宗教学者カール・ケレーニーは、このホメーロス風讃歌をとても重視していた。

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Comments

人間は洗脳という事からは中々逃れ難いものではありますよね

最近人間というものが自分も含めコピー機に思えて仕方ありません
最近突然我に返る事ができたのですが日々忙しく忘我の状態に甘んじているといつの間にか自分を失ってしまい
気がつくとそんな自分に愕然としてしまいます。

どれだけ洗脳されていないという人がいても実際は
洗脳されて生きている事実からは免れないんですよね。
そこから脱出するためには直観力というかクリエイティブな力が必要ですが
それすら一瞬の世界だと思われます
(スピリチュアル的には永遠なのかもしれません)

だからこそ大切なのはやっぱり今自分がどんなものに所属し
どういう世界を選んでいるのかを常に把握することなのかもしれません。
またあるいは所属している以外の未知の世界が無限に存在していることを
認めることも大切なんでしょうし。
また場合によっては乗り換える勇気も必要なんでしょうね。

ただ、洗脳されていることを知って生きている人は
知らずに生きている人よりも孤独で辛い人生をしいられるかもしれませんし
逆にこの世界をコントロールする権利を与えられた人間なのかもしれません。
まぁ実際にできるからとしようとする方はあまり頭のいい方では
ないように思われますし、する場合はかなりの覚悟が必要に思います。

そう言えば、マイケル・サンデルという方のハーバードで
一番人気のある授業をNHKが放映していましたが

彼はアメリカ人にしては中々日本人的な思考をしているのようで(偏見)
正義に関して多角的な見方をする必要があるという授業をされていました。
ハーバードで人気のある理由はアメリカ人にはショックなほど
新しい理論なのかもしれません。
ただ日本人には当たり前すぎる理論なので
日本の学校では埋もれそうな議題ですけど。
だからこそアメリカからその考えが逆輸入されるのは
何らかの意味があるようにも思います。

彼の著で「これからの正義の話をしよう」(原題Justice)という題で
だされていますがかなり面白いかもしれません。

Posted by: ゆり | 2010.07.06 06:31 PM

★ゆりさん
人間がコピー機であるというのは名言ですね。
私は、全ての根本は、欲をかかないことだと思っています。
必要なものは全て備わっているのですが、欲が強いと、それが全部閉じ込められて発揮できないように思います。
あえて求むるなかれの心境になろうと思っています。

Posted by: Kay | 2010.07.07 06:09 AM

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