長く苦しい戦い
「長く苦しい戦いの末、ついにわれらは世界を手中に収めた」
私が非常に印象深く憶えているこの言葉は、1993年のタツノコプロ制作の4話完結のアニメ「キャシャーン」の中のブライキングボスというアンドロイドの言葉だ。
アンドロイドが「苦しい戦い」というのも妙であるが、それだけに世界征服とは大変なものであることを感じたものだ。
我々は、外の世界を征服する必要はないが、内なる世界である心を征服しないといけない。そして、それはやはり、長く苦しい戦いであらざるを得ない。
人類最大の賢者の一人、ラルフ・ウォルドー・エマーソンは、「内にあるものに比べれば、外のものなど取るに足りない」と言ったが、世界を創るのは心なのであるから当然と思う。
心はたやすく征服されはしない。
ジョセフ・マーフィーは、旧約聖書の「ヨブ記」は、人が必要とする心の能力を鍛え上げ、世間の妄信に打ち勝ってサタンを退け、世界(心)の支配者となるまでの壮大な物語を比喩で言い表したものであると言った。
私は、古事記やギリシャ神話も同じであると思う。神話というものは、そのことを忘れないために物語にしたものだろうと思う。神話が滅びた国が滅ぶのは当たり前のことである。
そして、万能の神ゼウスでさえ、世界を支配下に収めるには、長く苦しい戦いを強いられた。しかし、ゼウスの勝利は始めから定められていたようにも感じる。我々の勝利も本当は予定されているはずなのだ。
神話に、外の世界を支配するための教訓を求めるのはおかしなことかもしれないが、それは、内なる世界を治めるインスピレーション(ひらめき、霊感)を与えてくれる貴いものである。
さっき、神話の滅びた国は滅ぶと述べたが、逆に言うなら、それは我々一人一人が滅びから逃れるための大いなる力にもなる。
ただし、現在の日本では神話は滅び、民族の集合意識は愚かな妄信に支配されている。ミヒャエル・エンデが「はてしない物語」(ネバー・エンディング・ストーリー)などの作品で述べたように、世界は滅びの危機を迎えている。
さて、外国のことは知らぬが、今の日本では大半の人間はもう救いようのないところまで来ており、滅びはそう遠くはない。だが、悲観することもない。一人の心の中に神が完全に立ち現れるなら世界すら支配する。荘子が「大火にも燃えず、大水にも濡れない」と書いた通りである。
【モモ】 ミヒャエル・エンデによる現代の神話「モモ」。文庫版。 | |
【モモ】 「モモ」の単行本。私が愛読するのはこれです。 | |
【モモ】 「モモ」の豪華愛蔵版。豪華本にする価値はあります。愛ある贈り物にも良いと思います。 | |
【神統記】 ゼウスの世界統一の物語を、ヘシオドスが美しい詩で語ったものです。短いものですが、それぞれの神々についてもよく分かります。世界的神話学者カール・ケレーニイも、ヘシオドスによる神々の説明を重視しているように感じます。 | |
【超訳 古事記】 もっとも面白く、心に響く古事記であると思います。 |
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