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2010.06.12

アルテミスとして輝く

私は、1ヵ月程前に、たまたまギリシャ神話に関心を寄せ、本を読み始めたら、たちまち引き込まれた。
しかし、ギリシャ神話は、すごく面白いというお話では無いし、教訓を学ぶようなものでもない。もしロマンがあるとしても、それは世間で言うロマンとは全く異なるものだ。
ギリシャ神話の映画化は昔から何度もあったが、どんなにカッコよく美しい俳優を使い、どんなに素晴らしい映像を作っても、観客は映画自体は見ていないのである。
ギリシャ神話の映像化は別に悪いことではないが、なるべく素朴に作るべきだし、むしろ舞台の方が向いていると思う。観客の意識を無理矢理に惹きつけようとするケバケバしい映像や音楽などの表現は決してあってはならない。
ギリシャ神話は、詩で表現することが最も好ましいし、気品ある絵柄の絵本や漫画も良い。気品とは慎みをちょっと違った角度から捉えたものに過ぎない。気品とは空気のようなものだ。
絵画や彫刻でも、昔からギリシャ神話は芸術家達の好む題材であった。私は、以前は、芸術家達がギリシャ神話を題材にした作品を創る理由がよく分からなかったし、せいぜいが、故郷の様子を描くように、幼い頃からの馴染みのイメージを創作するのだと思っていたが、それは全く違っていた。ギリシャ神話を描くことは宇宙を描くことなのだから、無限のインスピレーションを芸術家達に提供し、今後も作品が途絶えることはない。ただし、世間に迎合しようとする作品がこれほど下品になってしまう題材もない。

ギリシャ神話を知ることは自己を知ることだ。
自己とは本来、神であるのだから、自己を知ることは神を知ることであるし、神の現れである世界を見ることでもある。
自己を知れば、世界は自己に他ならないことが分かる。
世俗的にも、ジョセフ・マーフィーの潜在意識の法則は、心の奥深くの想いは実現するというが、今ここで全ての想いは完全に実現しているのである。
我々の周りの世界は、まさに我々の想いの反映である。

エマーソンは、どんな人達が会話をしていても、その背後でジュピター(ゼウス)がジュピターに頷いているのだと言う。
だが、ジュピターを背後に遠ざけていないで一体となれば、神が世界を創り出す様子も分かるし、神である自己が世界の所有者であることも分かると思う。
誰しも、神に限りなく近付く瞬間はある。それは、偶然を自己の意思とする時で、ニーチェはそれを、専横(わがまま勝手)な偶然をもっと専横に迎えることだと言う。すると、偶然はたちまちひざまずくのだ。
難しいことではない。あなた自身の物語であるギリシャ神話を読めば勝手に分かることだ。
もちろん、我が国の古事記やインド、エジプト、中国、あるいはケルトや北欧の神話でも同じことであると思うが、ギリシャ神話ほど意図的な教義の色の無いものは珍しい。学説にする術もないほど曖昧であることも幸いした。ある意味、あくまで伝説でしかない。グリム童話の場合は、子供向けにするために書き直された方が主流になってしまった。ペローは、教訓の部分を強調するために、かなり加筆や修正をしたかもしれない。しかし、ギリシャ神話にはもともと教訓なんてない。グリム童話のような残酷さはあっても、それを包み込んでしまう大らかさもあるので、作為的な改変は行われなかった。
もう一度言うと、神である自己を知るために、あなた自身の物語であるギリシャ神話を読むことは薦められる。あなたはゼウスとして話し、アポロンとして歩き、アテナとして思索し、アルテミスとして輝くだろう。


【ギュスターヴ・モロー―絵の具で描かれたデカダン文学】
1826年生まれのフランスの画家モローの絵画と解説。モローは、聖書やギリシャ神話を題材とした作品が多く、写実的だが幻想的な作品や、非常に抽象的な作品まである。

【水の女 溟き水より From the Deep Waters】
水に関わる乙女達を題材にした絵画を集めたユニークな画集。各国の神話や、水の乙女といえば欠かせないオフィーリアの作品も多い。

【ギリシアの神話 (神々の時代) 】
世界的宗教学者カール・ケレーニイによるギリシャ神話の詳説。物語を述べたというよりは、それぞれの神についての伝説や異説を紹介し、その意味を洞察したもので、理屈っぽく感じる部分はあるが、そこはケレーニイであるだけに鋭く深い。
ケレーニイは、カール・グスタフ・ユングとの共著で「神話学入門」を執筆している。

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