現在(2010年3月)、映画「涼宮ハルヒの消失」も上映されている、谷川流さんの小説「涼宮ハルヒシリーズ」は、2007年の「涼宮ハルヒの分裂」以来、中断されているにも関わらず、アニメDVD、漫画、画集、ゲーム、音楽CD、その他玩具が次々発売され、人気は衰えないようだ。
作品は、一見、中高校生向けの娯楽作品なのであるが、実は極めて深遠なもので(それを前面に押し出すことはないが)、主な読者層である若い人を中心に、意識を覚醒させているのは間違いないと思う。
「涼宮ハルヒシリーズ」は俗にライトノベル(若者向け小説)と呼ばれるものであるが、1965年に「中学三年コース(学習研究社)」で連載開始され、何度もテレビドラマ化、映画化され、今年(2010年)は、ついに、その主人公である和子の娘を主人公にした映画まで制作された、筒井康隆さんの「時をかける少女」がライトノベルの元祖と言えるかもしれない。
面白いことに、「涼宮ハルヒシリーズ」には、朝比奈みくるという未来から来たらしい美少女が登場するが、主人公のキョン(高校1年生男子)は、小説中でこの朝比奈みくるを「時をかける少女」と呼んだことがあった。これは、明らかに筒井康隆さんのその作品を意識してのことだろうし、ある程度の年齢の読者なら、大半がそれで何のことか分かるくらい、「時をかける少女」は国民的作品であると思う。
また、「涼宮ハルヒシリーズ」といえば、いとうのいぢさんという女性イラストレーターによる人物デザインと挿絵が有名で人気があるが、なんと「時をかける少女」の、カバーイラストおよび巻頭イラストをいとうのいぢさんが描いたものが出版されている。尚、いとうのいぢさんは、2008年に「ファウスト」誌で連載が開始された筒井康隆さんの小説「ビアンカ・オーバースタディ」の挿絵も描いている。
ただ、いとうのいぢイラスト版「時をかける少女」には、私の好きな「悪夢の真相」「果てしなき多元宇宙」が収録されていないのが残念である(別の短編が収録されている)。
「涼宮ハルヒシリーズ」の主人公、涼宮ハルヒはひどく風変わりな女子高生である。
高校入学時の、クラスでの自己紹介「ただの人間には興味ありません。この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら私のところに来なさい。以上!」と言った挨拶は歴史的なものになると思う。
ところで、ひどく風変わりといえば、昔から芸術家と天才科学者と相場が決まっている。
もし、涼宮ハルヒが、岡本太郎さん、池田満寿夫さん、横尾忠則さんに逢ったら、どう反応するか考えてみると楽しい。
岡本太郎さんが、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者かどうかは知らないが、おそらく、ハルヒは彼を大いに気に入り、ことによっては最強のコンビになると思う。岡本太郎が、ハルヒが作り出した神人を見て「爆発だ!」と叫ぶのを見たいものである。
横尾忠則さんは、普通に宇宙人、超能力者、霊能力者を信じていると思う。電車を画材にでっかい目を描くといったことはハルヒ好みと思うが、横尾さんの独自性をハルヒがどう捉えるかが問題と思う。
池田満寿夫さんとなると、案外にハルヒは「まともなヤツ」と思うかもしれない。池田さん自身も著書に「私に狂気はない」と書いていた。彼に狂気が無いとはとても思えないが、確かにまともな部分が多いと感じる。著書で彼は、「想像でなら何でもありだが、現実にしてはならないことがある」と言い、この世の汚点にデリケートな反応をする人で、本質的に非常に優しい人であると思う。彼の著書を読んだ女子高生から「あなたの芸術は理解できないが、あなた自身を好きになったので工房を訪ねたい」という手紙をもらうと、恥ずかしいという理由で返事を出さない人だった。実際、彼の著書を読むと、好きにならずにいられない人だと思う。
ハルヒのファンの方も、岡本太郎さん、池田満寿夫さん、横尾忠則さんの芸術や著書に挑んでもらいたいものだ。
もちろん、ハルヒファンに限らず、これら世間を超越した大芸術家に親しみ、その中で苦しんでいる狭く硬い殻を壊し、自由に愉しく生きたいものである。
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Comments
涼宮ハルヒの消失はすごく良かったですね!また見に行きたいと思う傑作でした。
Posted by: ニャン・クン | 2010.03.06 10:53 PM
★ニャン・クンさん
私は見てないです。
Posted by: Kay | 2010.03.07 08:10 AM