« 反骨精神 | Main | 青い鳥 »

2010.03.27

日々の糧

日々の糧をどう稼ぐか。
イエスは、「人はパンのみで生きるのではない」と言ったが、とりあえずは、糧とは食料のこととしよう。

本来、人間は、住居や衣料に関しては、自分で用意しなくてもなんとかなったものであるが、少なくとも、現代の日本では、これらにすらかなりのお金が必要である。そして、そのお金がなく、住居を持てない者すら普通に現れている。つまり、食料だけのためでなく、我々は生きるために常に相当な収入を必要とする。
また、餓えた人間がいる一方で、毎日、大量の食物が捨てられている。日本では食料の半分は捨てられているらしい。

日本では、日々の糧を得るために、世間で言うまっとうな仕事を、面白くも無く毎日やり、やがて心が腐って病気になったり、死んでいく者も増えているし、さらに増えるだろう。
世界には、泥棒も、そうおかしな仕事とは思われておらず、警察も泥棒を捕まえないという国もある。
もしかしたら、自動車を無理矢理に大量に売るこの国の方がよほどおかしいのかもしれない。

アニメ「NOIR(ノワール)」の第2話のタイトルが「日々の糧」だった。実に意味深いタイトルである。
2人の少女、ミレイユと霧香の夕食の場面。場所はパリのミレイユのアパルトマン(アパート)である。
美貌のパリジェンヌであるミレイユは、自分が作った料理(簡素ながら、ちゃんとしたものだった)を、あまりに無表情に食べる、おとなしい雰囲気の日本人の少女である霧香を見て言う。
「日々の糧は神の恵みよ。もっと美味しそうに食べたら?」
霧香は顔を上げ、
「美味しいわ」
と答える。しかし、
「ちっともそう見えない」
とミレイユは不満顔だ。

2人の仕事は殺し屋だった。
仕事の後、霧香は言う。
「あたし、人を殺して生きている。なのに・・・どうして悲しくないの?」
しかし、霧香の目からは涙がとめどなくこぼれていた。
その精神の歪みに驚愕するミレイユ。

だが、我々は霧香のことを異常と言えるだろうか?
不必要に大量の自動車を生産し、消費者の欲望を掻き立てて売りまくる自動車産業。
果たしてそれが子供のためになるかどうかを全く考慮せずに、子供を一流と言われる学校に入学させる受験産業。
過剰な栄養摂取で身体に悪いことが明らかであるにかかわらず、大量に食べさせる飲食産業。
その他、多くの仕事が、人々の幸福のためではなく、ただ金のために血道をあげているのではないのか?
そして、そういったことを奨励するばかりか、さらなる発展を押し進める政府。
それでいて、我々は、霧香のように涙を流さず、むしろ歓喜の顔をしているかもしれないのだ。
「私は、破滅的な数の自動車を売って生きている。なのに・・・なぜ悲しくないのか?」
「私は、子供達を不幸にする可能性に配慮せず、一流の学校に押しやって生きている。なのに・・・なぜ悲しくないのか?」
そして意味もなく涙が流れたなら・・・いずれ霧香のように苦しむだろうが、救いはあるかもしれない。

霧香という名は、彼女の本当の名ではない。彼女は過去の記憶を失くし、自分の本当の名を知らない。
しかし、彼女は最後にこう言うのだ。
「人を殺して・・・私は悲しい」
「私は、夕叢霧香(ゆうむらきりか)として、罪を受け入れる」

私も、罪の深い仕事からはなるべく早急に手を引こう。
そして、人々を幸福にするための仕事で日々の糧を得たいと思う。


【ノワール Vol.1 [DVD]】
良かったら、いっぺん見てやって下さい。セーラー服の美少女のガン・アクションはなかなかのものです。

【ものぐさ精神分析】
この精神分析学の本は、嘘もあるかもしれませんが、その分、確かに真理もあり、まっとうな心理学や精神分析学の専門家をペテン師扱いするだけのことはあると思いました。
著者のサイトで、私が「百年ばれない嘘は世界を進歩させる」と述べたら、岸田さんは「唯幻論(岸田さんの精神分析理論)が百年ばれない嘘であることを私自身が願っている」と答えてくれたものです。
映画監督の伊丹十三さんは、この本で、幼い頃からの精神の枷を外し、能力を解放できたと言い、すっかり岸田さんのファンになりました。ガイナックス創業者で、少し前からはダイエットで有名になってしまった岡田斗司夫さんも、洗脳関係の優れた著作がありますが、岸田さんのファンであることを表明しています。一読の価値はあると思います。
著者の岸田秀さんは、フロイト派の精神分析学者で、膨大な著書があります。

↓応援していただける方はいずれか(できれば両方)クリックで投票をお願い致します。
人気blogランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ

|

« 反骨精神 | Main | 青い鳥 »

Comments

仰る通りだと思います。
子供たちは敏感です。
モンスターといわれる無差別殺人も、根は、この辺りにあるのだと、思っております。
少しの工夫で、分かち合いで、みんなが幸せになれる。
もう一度、人類は、原点に帰るべきだと思いますcherryblossom

Posted by: | 2010.03.28 at 02:51 AM

失礼!上記のコメント、名前等が抜けておりました。
同下ですup

Posted by: HIRANO | 2010.03.28 at 02:56 AM

★HIRANOさん

貴方が私の文章から何を感じ取られたのかは分かりませんし、貴方が何を人間の原点と思われているのかも分かりません。
それでも、世間がおかしいと思われているなら、良いことかもしれませんね。

Posted by: Kay | 2010.03.28 at 08:15 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3170/47919325

Listed below are links to weblogs that reference 日々の糧:

« 反骨精神 | Main | 青い鳥 »