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2009.12.13

日本人の秘法「うけい」

西洋の成功哲学は、もちろん日本人にも有効と思うが、全く異なった歴史、文化によって持つことになった大きな考え方の違いにも注意した方が良いと思う。

欧米では、ごく近年まで、成功しなければ生命すら危ういが、成功すれば良いことだらけで、現在でも、成功というものに対する肯定的なイメージは日本とは桁違いだ。
しかし、日本では、かつての地域共生社会の風潮は、全体としては現在でも決してなくなってはおらず、むしろ成功することで地域に住み難い場合すらある。

欧米では、手段を問わず、成功すれば良いといった面も確かにあるが、日本では、アイディアやテクニックで大儲けした人を金の亡者扱いせずにいられないようなところが絶対にある。
日本では、余程の信念があるか、面の皮が厚くないと、西洋の成功哲学の理念では華々しい成功はできない。

では、日本人は日本人にあった方法で成功すれば良いのである。
西洋では、金や力は正義であるが、日本ではそうではない。真、善、美が正義であり、それがあってこそ、他人はもちろんだが、自分の成功すらやっと受け入れることが出来る。逆にいえば、正義なく成功しても、周囲の反発や自らの葛藤ですぐに転落するのである。
では、日本人に相応しい成功法とは何か?
実は、古事記にはっきり書いてあるといえば驚くだろうか?
けっして、特別の読み方をしないと分からないような書き方ではない。
それは、「誓約」である。「うけい」と読み、古代日本で行われた一種の占いである。
以下に説明する。

私の認識では、古事記では、誓約の場面が4つある。最も有名なのは、最高位の女神である天照大神(アマテラスオオミカミ)と、その弟である須佐之男命(スサノオノミコト)の間で行われたものであるが、これは実はやや変則的に行われたもので複雑なため、別のもので説明する。
天照大神の孫であるニニギが、天界である高天原(タカマガハラ、あるいは、タカマノハラ)から地上に降りた、いわゆる天孫降臨をするのだが、そこでニニギは、木花咲耶姫(コノハナサクヤビメ)という、地上の神の娘である可憐な乙女に出逢う。
ニニギはコノハナサクヤビメに一目惚れし、妻にした。そして、コノハナサクヤビメは身ごもるが、ニニギは、その子は自分の子ではなく、どこかの地上の神の子であるに違いないと言う。
怒ったコノハナサクヤビメが誓約を行う。
コノハナサクヤビメは、大きな御殿を作って、その中にこもり、内側から塗り固めてしまう。そして、出産の時には火をかける。子供がニニギの子であるなら、必ず無事で生まれると定めた誓約であったのだ。
子供は無事に生まれ、コノハナサクヤビメの潔白は証明される。

誓約では、「もしこうであるなら、こういう結果になる」と定めるのが決まりである(天照大神と須佐之男命の誓約では、結果の方を定めずに行った)。
コノハナサクヤビメの場合は、「もしお腹の子がニニギの子であるなら、どんな状況でも無事に生まれる」である。
この「もし」のところには、心の正しさといった、正義や善が表されるのが良いと思われる(単に事実を占う場合もある)

例えば、「もし、私の歌が人々を勇気付けるのであれば、私は歌手として成功する」といった誓約が考えられる。
西洋の場合は、とにかく歌手として成功するというのが成功哲学だ。この方式では、日本人は成功し難い。
先にも書いたが、西洋では、成功そのものが善であり正義であり、人は楽しむ権利があると信じられているからである。
しかし、日本では、成功し、楽しみを得るには、それに値する正しさ、心の美しさが必要なのである。ホリエモンがバッシングされる訳がお分かりと思う。

西洋式の成功法則でなかなか成功しないなら、誓約を行ってみると良いと思う。
そうすれば、心の葛藤が起き難く、自然に成功できる。
また、自分の願いが、誓約に値しない、幼い、あるいは、自己中心的なものでしかないことが明らかになり、実に有益であると思う。


本日は、明治、大正、昭和に渡って活躍された児童文学作家、鈴木三重吉氏による「古事記物語」をご紹介します。
鈴木三重吉氏は、子供達に美しい童話を授けることに使命感を持ち、自らも優れた作品を書くと共に、世界中の童話を紹介しました。
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鈴木三重吉氏は、実に美しい言葉使いで、古事記を、古事記らしく格調高い見事な文学作品にすることに成功しました。これは、子供はもちろん、大人が読むにも素晴らしいもので、私も愛読しています。
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