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2009.12.24

ポップ歌手と交響楽団

人気のあるポップ歌手がオーケストラを従えて歌うコンサートが行われることがある。
大規模オーケストラである交響楽団が使われることもあるかもしれない。
それに関し、私は、何とはなく複雑な思いを抱く。
オーケストラは、クラシック音楽の演奏がメインであるが、これら人気歌手のイベントに呼ばれるのは、決まって最高クラスのオーケストラだ。楽団の名前そのものも、そのコンサートの売り物であるはずだ。

有名オーケストラの団員になるには、相当な才能を持った者が幼少の頃から、長時間の厳しいレッスンに耐え、難関の音大に進学し、さらに大学院に進学したり、海外の有名な音大、音楽学院に留学する場合も多いと思う。
方や、人気歌手の方は、確かに特別な才能を持ち、それを開花させたものではあるが、ある意味、時流に乗ったという部分が大きく、必ずしも音楽的に秀逸とは限らない。時代が少しずれていれば、世の中にさっぱり受け入れられなかった場合がほとんどかもしれない。そして、彼らのファンの中には、音楽そのものはどうでも良いという人も多いだろうし、そうでなくても、彼らのファンにとって良い音楽とは、単にご機嫌にさせてくれる音楽なのだ。
早い話が、音楽的にはレベルが違うという言い方をしても間違いではないと思う。
私は、彼らに「身の程を知れよ」と言いたい気持ちは確かにある。

しかし、こういったイベントが、オーケストラの方にメリットが無いわけでもないと思う。
海外のことは知らないが、日本では、最高の交響楽団とはいえ、ほとんどの団員の収入は決して多くない。しかも、彼らが必要とする楽器は高価であり、その購入費用は当然ながら自腹である。
有名ポップ歌手と共演すれば、クラシックファン以外にも楽団の名前が知られる可能性があり、その上、一時的な収入が楽団にもたらされるだろう。そして、何より、その卓越した演奏技術を披露できる。
しかし、だからこそ、オーケストラにとっては不条理なところも大きい。とんでもない高収入の人気ポップ歌手の背後で、常に厳しい練習を欠かさず、腕は超一流だが、平均的サラリーマンと同じか、それよりも劣るかもしれない収入のオーケストラの団員。もし平常心を保てるなら大したものだと思う。

今では、どのくらい行われているのかは分らないが、日本では、大晦日にベートーヴェンの「交響曲第9番」、通称「第九」を聴く風習があった。これが日本特有のものであることを知らない人も多かったはずだ。
そもそもこれは、主に終戦後まもない頃の話ではあろうが、貧しい楽団員が年越し費用稼ぎに行ったことから始まったもので、近年でも、重要な収益源であるのだと思う。
能力は必ずしも収入と比例しないし、ことに、クラシック音楽の世界では、大きな収入を得る可能性は極めて低いに違いない。それに、まかり間違って音楽で高収入を得ることにでもなれば、その者が純粋な芸術家でいられる可能性は、あらゆる芸術分野の中でも、最も低い方だろう。だが、彼らは、世の中に貴いものを与えてくれているはずである。経済的苦労もまた芸術に必要なものだと私は思うが、一般の人々に芸術の価値がもっと理解されるなら、少しは状況は良くなるかもしれない。そのためには、高名な芸術家も傲慢さを捨てる必要があるかもしれない。


今日の芸術
岡本太郎さんは、一般の人々が芸術に親しみ、自ら創作し、歌い、演奏することの必要性や価値を強く訴えていた。
「絵の先生が描くような絵を素人が描くのは不可能だが、私のようなのは誰にでも描ける」と言い切り、「あなたも、本日ただいまより芸術家になれる」と保証した。
岡本太郎さんは、一般的なイメージとはかなり違う人と思う。その岡本太郎さんが、芸術の真髄を誰にでも分かるように説いたのが本書だ。岡本太郎さんは、芸術により、人々が元気になり希望を持つことを強く望んでいたのである。

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