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2009.12.30

企業も人も発展するマルチタクス制業務

日曜日に、たまたま見たテレビで、観光地の旅館だと思うが、「マルチタスク制業務」の効用をアピールしていた。
一人のスタッフが、調理補助から接客、給仕をし、事務をこなし、さらに舞台で演奏をし、新人研修もする。
つまり、何かに特化した専門業務だけをするのではなく、一人で出来る限り何でもやるという仕事の形である。
(コンピュータにおけるマルチタスクとはやや意味が異なる)

私は、非常に感じ入るところがあった。
誰でも、専門の仕事に特化して働きたがるものだと思う。早い話が、「あれもこれもやる」という仕事を嫌うと思う。
確かに、その仕事が高度に専門的な場合であれば、そうならざるを得ない場合もあるだろう。例えば、医者やプロスポーツ選手などだ。
しかし、普通のサラリーマンの場合は、99.9パーセント、専門に特化しなければならないような仕事ではない。
「専門、特技はありません」といった人の場合、仕事は雑務が当然と思うが、それでも、なるべく決まったパターンの仕事をしたがる理由は、「すぐに慣れ、その後は考えずに出来て楽だ」「予想外のことがあまり起こらず、面倒や不安がない」というものだと想像できるが、これこそが、自己の成長を妨げ、結果として、仕事自体が退屈で面白くないものにする原因であると思う。
高度な仕事の場合は、専門化していると言っても、「一人前になるのに長い訓練、経験が必要で、常に創意工夫も必要。つまり、なかなか慣れず、楽にはならない」「予想外のことだらけで、面倒も不安も多い」のである。

以前、大手コンピュータシステム会社が、ある団体にコンピュータシステムを導入した時、私はその団体側のオブザーバーとして関ったことがある。
設置の日、そのコンピュータシステム会社から十名近いエンジニアが来たことに、私は面食らった。
大した規模のシステムではないが、サーバー担当、ネットワーク担当、アプリケーションソフト担当等とに分かれていた。
そして、言っては悪いが、それぞれの「専門家」が、ことごとに大したレベルではない。それに、サーバーやネットワークのインストールや設定は私がほとんど済ませていたのだ。ちなみに私はサーバーやネットワークの専門家ではない(専門はソフト開発だ)。
私なら、あの程度なら、全部まとめて一人で十分できるし、実際、やっている。私の知っている、小規模であるが実力ある開発会社では、かなりの規模のものでも一人でやることがよくある。
また、技術者はよく、お客様に、「それは営業に聞いて下さい」とか、社内でも「それは営業の仕事だ」といった言い方をする者がよくいる。そういうのに限って、技術は大したことはない。私は、システムエンジニアは半分営業と心得ているし、受託システム、流通システム(パッケージソフト)の仕事を、大抵自分で取ってきている。

さっき、医者やスポーツ選手の場合は専門家であって良いと書いたが、こんなこともある。
王貞治さんが現役選手時代の1974年、彼の所属する巨人軍はリーグ9連覇を達成し、王選手自身も3冠王となったが、その年の日本プロスポーツ大賞には、キックボクシングの沢村忠選手が選ばれた。
沢村選手は、その数年前までは、選手として戦うと共に、道行く人に、自らキックボクシングとは何かを説明しながらチケットを売っていた。当時、キックボクシングという格闘技ができたばかりだったのだ。また、沢村選手のジムの会長やトレーナーは、女子プロレスのリングを借り、自分達で会場に運んで組み立てていた。
沢村選手は、引退するまでファンを大切にし、徹底したファンサービスを行った。有名芸能人並の人気者になってしまった頃には、練習時間やプライベートな時間が犠牲になっても、営業が取ってきたどんな仕事でも一切文句を言わず、淡々とこなした。文句どころか、「せっかく取ってきてくれた仕事」と思ってやっていたようだ。試合会場に観客が入らなかった頃のことを憶えており、人気の有り難さを痛感していたということもあるだろう。

医者と言っても、規模の大きくない病院や、ましてや小さな医院では、経営はもちろん、雑多な仕事の一切合財を医者自らがしないといけない場合も多い。
一流芸術家もほとんどは自分で営業しているし、歌手や俳優、その他のタレントも、大物でない限り、仕事を待っているだけでは駄目だろう。

本来、仕事とはマルチタスクなものであると断言できる。
専門家気取りで、1つの仕事しかしないと非常に効率が悪い。そんな社員ばかりの会社は、今の時代、すぐに潰れるはずだ。
逆に、従業員がマルチタスクで仕事をすれば、収益が少なくても案外にやっていける。それどころか、生産性やサービスが大きく向上し、結果として収益が大きく増える場合が多いはずだ。

今は改善傾向にあるが、役所では市民への対応が不親切で、しかも無駄が多かった。これは、公務員に専門家意識があるからだ。「お役所仕事」とは、効率やサービスの悪さの代名詞であり、企業の中でも、お役所仕事をしてはいけないとよく戒められることをご存知かもしれない。
また、公務員にとって、市民はお客様である。リー・アイアコッカの父親はハンバーガーショップを経営していたのだが、客への態度が悪い従業員は即クビにしたと、アイアコッカの自伝に書かれていたのを読んだことがある。ましてや、市民への態度の悪い公務員は、即クビにするのが当然かもしれない。

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Comments

「一流」 ではありませんけれど
 私も絵描きの端くれなので
  全ての仕事を自分一人でこなしています。

 まあ 根の部分が自閉的……
  ということもあるんですけどね。
 基本的に 独りでやれないことはやらない……。

とはいえ
 画廊企画展などには できるだけ積極的に参加して
そのオープニング・パーティーには
 営業モード……というか社交人格を前面に出して臨んでいます。

ちなみに個展においては
 オープニング・パーティーなど決して行ないません。
  初日から決壊を起こしたら大変ですから……。

そうそう……
 ホームページのイラスト 拝見いたしました。
とてもスピリチュアルな画風ですね。
 物質的肉体を持った女性たちを描かれているのに
  まるでニンフだとかエルフのような感じ……。

私の場合
 たまに人物画を描いても
どういうわけか 戦闘的になってしまい……
 っていうか これまで発表してきた肖像はどれも

  武装した女戦士ばかりです。

 漫画や映画にも お詳しいようで……
更新は止まってますが 「アニメ哲学部屋」 も
 これから読み込んでいくのが楽しみです。

Posted by: Minr Kamti | 2009.12.30 at 07:52 PM

★Minr Kamtiさん
芸術家の営業的側面の興味深いお話をありがとうございます。
私も、本来は社交人格モードはやや辛いのですが、社会人の最初はセールスマンという無茶をやったものです。

私の絵・・・そういえば、半年ほど全く描いていませんね。老後に本格的に始めようかな・・・と(笑)。
プロレスの有名なジャイアント馬場さんも、引退後、本格的に絵の修行をして画家になりたかったと聞きますし。

Minr Kamtiさんに比べれば、私など、ミジンコ並に普通の人ですね。
Minr Kamtiさんの今後も興味深いです。

Posted by: Kay | 2009.12.31 at 08:47 AM

 いえいえ とんでもありません。
私のほうこそ Kayさんの
 恐るべき ご博識と
  広範なる多才ぶりに
 心底から感銘を受けている次第なのです。

この内容で このボリュームの記事を
 毎日 書ける方って
そうとう時間管理に長けているのか
 実は正味3人のプロジェクトチームなんじゃないか
  ……なんて 考えてしまいますよ。

 私も広く そして程々に深く学んできたつもりではありますが
とても とても 太刀打ちできません。

 ピンと外れかもしれませんが……
もしかして
 天照大神をツールとしてお使いじゃありませんか?

だとすれば 「ミジンコ」 なる ご感覚も
 納得できなくもないんですけど……。
だって
 太陽の主観からしてみれば
銀河系の只中に浮ぶ自分のことを
 ミジンコのごとく感じているでしょうから……。

って戯言は これくらいにしておきましょう……。

 良いお年をお迎え下さい。
来年もよろしくお願い致します
(URLは 「読後焼却すべし」 に纏わる話題です)。

Posted by: Minr Kamti | 2009.12.31 at 05:12 PM

★Minr Kamtiさん
ブログの毎日の更新に関しては、単に暇なのか、三重人格なのかもしれません(笑)。
いえ、実に楽なものですよ。好きなこと書いてるだけですので。

> 太陽の主観からしてみれば
>銀河系の只中に浮ぶ自分のことを
> ミジンコのごとく感じているでしょうから……。

そうだと思います。
別の表現では、「身体も心も手放して、自分を地平線の彼方にあるように感じる。死人のように生きる」ようなものと思います。
ただ、ついついミジンコと合体するので、自虐的に自分をミジンコと言うわけです。

こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします。

Posted by: Kay | 2010.01.01 at 08:08 AM

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