庶民のための真の偉人
他国においてはどうかは分らないが、今の日本人にとって、日本史上の誰でも知っている偉人というと、政治・経済への関わりの大きかった者であり、例えば、徳川家康や坂本竜馬といった部類の、支配者、社会的改革者、政治家、軍事家らである。
そして、これらの偉人の考え方を学ぼうといったことを訴える人や書籍も多い。しかし、全く無関係とは言えないかもしれないが、国家運営といったようなことのための思想と、個人の幸福のための思想とは甚だしく異なり、全く逆の発想が必要なことも少なくはない。
中国の、老子、荘子、列子などを読むと、人間としては、「道」に従って生きることが重要であることは共通するが、やはり、君主の生き方と人民の生き方とは、はっきり区別して書かれていることが分る。
個人の幸福のための優れた思想というものは、埋もれてしまい、なかなか伝えられないものである。
その中でも、究極とも言える人物として、江戸時代中期の観相(顔や身体の相で鑑定する運命学)家の水野南北、江戸時代末期の神道家の黒住宗忠、明治、大正の教育家で、岡田式静坐法の岡田虎二郎がいる。
これらは、「知る人ぞ知る」といった感じであり、その偉大さを知る者にとっては限りない崇敬の対象であるが、大半の日本人は、その名前すら知らない。しかし、実際に、我々凡人を真の幸福に導くのは、これら庶民派の大思想家なのである。そして、彼らの偉大さは、大政治家、大軍事化に優るとも劣らない。
それにしても、水野南北、黒住宗忠、岡田虎二郎らの書籍の少なさ。出版されても、すぐに廃版状態になるのは嘆かわしいばかりである。
水野南北は、その思想は深いながら、実践は最もシンプルである。即ち、食を慎みさえすれば良いのである。
しかし、現代の、特に我が国のように飽食、美食に溢れる状況では、粗食、少食に撤することはなかなかできることではない。
黒住宗忠の教えは、現代人にも分り易い部分が多いが、それは神道の正道であるとも思える。神様に全てお任せし、明るく楽しく生きるを良しとする。ただ、革新的なのは、神様(天照大神様)の御開運を祈るという考え方である。神道においては、我々は神様の直系の子孫であり、神様は我々の大親である。その大親の御開運を祈ることにより、大親である神様との信頼関係や親しみを増すことになる。ここらは、下に紹介した書籍で理解いただきたいところである。
岡田虎二郎の思想も大変に深いのであるが、究極的には、禅宗の道元禅師と同じく、ただ坐れということになる。
しかし、静坐は絶対他力であること、人は、学問や克己では大成しないことなど、現代の我々にも極めて重要な教えであり、やはり、下に紹介した書籍で確認いただきたいものであると思う。
「南北相法」と「修身録」の両方を1冊に収めている。 特に重要な「修身録」がなかなか入手できない状況(中古本も高価な場合が多い)の中で、2009年6月に本書が出版された。 とても読みやすい訳で、お薦めである。 | |
神道黒住教に「いのちの教え」という聖典があるが、それは宗忠が書いた文章そのままの古文で、現代の我々には読みにくい。 本書は、教育家の山田敏雄さんが、そのエッセンスを分り易く説明してくれている。 | |
開運に関する多くの著書のある神道家の山田雅晴さんによる本で、宗教や精神世界に広く通じる著者による黒住宗忠の思想、伝承の説明はとても面白い。 山田雅晴さんは、水野南北にも関心を持っていることを、他の著書で書かれていた。 | |
第一高等学校の学生だった時、岡田虎二郎の直接の指導を受け、百歳で亡くなられるまで、岡田式静坐法に打ち込んだ実業家、柳田誠二郎さんによる、岡田虎二郎の思想と岡田式静坐法を伝える書。 病弱であった柳田さんは、岡田式静坐法で健康になり、社会的にも、日銀副総裁、日航社長等を歴任する等活躍された。 柳田誠二郎さんによる岡田式静坐法の本は他に2冊あるが、現在、新品で入手可能なのはこれのみと思う。 先日紹介した本です。 |
The comments to this entry are closed.
Comments
こんにちは。深いお話と参考書の紹介、興味深いです。ありがとうございます。 ☆(〇'▽'〇)☆ 自然農法の川口由一さんや整体の野口晴哉さんの書籍も面白いと思いました(●^o^●)幸せでありますように
Posted by: 祈り | 2009.09.09 06:46 AM