ジェニバーベリーの香り
私は普段は飲酒はほとんどしないのですが、洋酒を中心に30本程度は家に置いています。
来客の際に振舞うという理由もあるのですが、最近では、来客は焼酎や梅酒を好む場合が多く、その目的では洋酒はあまり必要ないかもしれません(焼酎も梅酒も、各種良いものを用意しています)。
洋酒を置いてあるのは、ボトルが美しかったり雰囲気があるからです。一種のコレクション感覚かもしれません。
また、洋酒の香りには特別な思い入れがあります。
洋酒には、実に香りの良いものがあります。この点は、我が国の日本酒や焼酎にはないものと思います。
ところで、香りというのは記憶に強く残るものであるらしいです。
例えば、子供の頃によく遊びに行った家に常に漂っていた香りと似た匂いを感じると、その頃の記憶が鮮明に蘇るということがよくあるもののようです。
当然、悪い思い出と共にある香りの場合は、あまり楽しくない場合もあるでしょうが、時が経てば、よほどの悪い出来事でない限り、それなりに懐かしくて良いものに変わる可能性もあります。過去というのは解釈の問題でもあります。ずっと悪い思い出だと思っていたのが、解釈を変えて良い思い出になることも必ずあります。文字通り「過去を変える」のです。
私は、最初にジン(オランダを起源とする蒸留酒)の香りを嗅いだ時、杜松(ねず)の実(ジェニバーベリー)の独特な香りにあまり良い印象を持ちませんでしたが、やがて大好きになりました。
長く苦しいニートや辛く厳しい仕事をしていた時代を経て、能力が認められ、調子に乗ってセミナー講演も行い(最高で70人程度までですが)、収入も大幅アップした頃、たまたまスーパーで英国のゴードン・ドライ・ジンを買って帰り、その香りを味わったのでした。
今でも、このジンの香りを嗅ぐと、当時の希望に満ちた心が蘇り、実に気分が良くなります。
また、フランスのブルゴーニュワインのボジョレーヴィラージュの香りは最初から実に気に入りました。いわゆる、「何とも言えない」良い香りというわけです。
ジンはそのまま飲むよりも、カクテルの材料にする場合が多いかもしれませんが、昔は専らストレートで飲まれていました。
私は、あらゆる酒はストレートで飲んでこそ、その良さが分ると思います。ストレートで飲むと言うと、驚いて「お強いですね」とか言われますが、少しの量を味わって飲むのが私のスタイルです。私にとって、いかなる酒も水で割って飲む意味は全くありません。
英国のゴードン・ドライ・ジン。最も有名なジンだ。ラベルのサイド部に杜松の実の絵が描かれている。
酒の歴史には、いろいろ興味深いお話があります。
ジンは、もともと庶民の安酒で、これを好んで飲んでいたために爵位を次ぎそこなった貴族がいたりしました。
このジンは、最初は薬として薬屋で売られていたそうで、薬草も含まれており、今でもオランダでは風邪の特効薬です。ロシアでは当然ウォッカがその役ですね。
ジンやウォッカは、日本の焼酎と同じ蒸留酒の仲間で、スピリッツと呼ばれます。ウイスキーやブランデーなどのように樽で熟成させません。蒸留酒は、いわゆる身体に残らず、健康に良いと言われます。
しかし、ウイスキーもまた、もともとは薬で、アイルランド語の「生命の水」を意味するウシュク・ベーハーが語源と言われます。さらに、現在、フランスでブランデーを意味するオードヴィーも「命の水」の意味です。
酒が身体に良いというのは、1つには血行の促進作用があり、また、思考能力を麻痺させることで、余計なことを考えてクヨクヨすることがなくなるということが考えられます。ただ、あくまで限度を守ってのことですね。
酒は百薬の長とはよく言ったものです。
また、「聖なる量子力学9つの旅」(フレッド・アラン・ウルフ。徳間書店)の著者で、世界的量子物理学者F.A.ウルフは子供の頃の神秘体験から量子物理学の研究者になったのですが、シャーマニズムに深い興味を持ち、自ら実践する中で、優れた何人かのシャーマンに出逢います。シャーマンは、アヤワスカ等の植物から作る幻覚剤を用い、変性意識状態に導くことで異世界と交流するのですが、効果に大差があるとはいえ、アルコールにも幻覚剤としての効果があり、非常に有益であると語ったシャーマンもいるようです。
酒には、興味をもって調べていると、ロマンに満ちた話が沢山あります。
どうせなら、優雅かつ風流に味わって飲みたいものと思います。
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