格が違うことが分からない愚かさ
大相撲で、横綱と前頭何枚目かの力士では、確かに実力差は大きいが、横綱対幕下などというあり得ない対戦ほど勝負は絶対ではない。
プロボクシングでも、結果が確実に予想できるような実力差のある対戦はない。
ライオンとヒョウが同じ地域に棲んでいることはあるが、ヒョウがライオンに戦いを挑むことはない。
ヒョウとライオンに限らず、明らかに力に差がある相手に挑む野生動物はいない。たとえ、子供を守っている母親であっても、絶対に敵わない場合は、子供を見捨てて逃げる。
しかし、人間だけは、全く格の違う相手に愚かにも挑むことがある。
それが良い場合もなくはないが、ほとんどが匹夫の勇である。
プロレスの世界では史上最強と言われたルー・テーズというレスラーの師匠だったエド・ルイスを、テーズは「史上最強は私ではなくルイスだ」と言った。そのルイスに、アマチュアの世界では賞賛を浴びるレスラーが挑戦してきた。ルイスはアマチュアレスラーの肩を砕き、その肩が炎症を起こして、この20歳の前途有望だったはずの若者は両腕を切断した。
おのれの力を見誤り、自惚れや傲慢が過ぎると、こういう悲惨な結果となる。それはよく見られることだ。
分かりやすいよう、肉体での戦いの例をあげたが、もちろん、いかなることでも同じだ。ビジネス、芸術、思想、哲学、その他、何らかの技術やノウハウなどにおいても、自分が全く格の違う相手と互角、あるいは、上だと思い込む未熟者は人の世に溢れかえっている。
我々が誰かを批判せずにいられなかったり、嫌悪する時、ほとんどの場合、このような愚かな間違いを犯していると思ってまず間違いがない。
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