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2009.03.27

「マッチ売りの少女」のニューソート

「マッチ売りの少女」のニューソート(新しい解釈)である。
私は、アンデルセンの伝記は熱心に読んだ。確かに、アンデルセンはマッチ売りの少女のような境遇の子供を沢山知っていたようであるが、アンデルセンが、ただ、悲惨な女の子の話としてこれを書いたとは思えない。
実際、「マッチ売りの少女」は、表面的に読むと、全く童話ではない。単に児童虐待のドキュメントのようだ。

「人魚姫」の解釈については、アンデルセンが自分を人魚姫に投影したことはよく言われる。
しかし、「マッチ売りの少女」に関しては、緊迫感や悲壮感のせいもあり、お話の表面だけで読者は胸がいっぱいで、あまり著者の特別な意図が推測されることはなかったと思う。

死んだマッチ売りの少女を見て、人々は哀れんだ。
しかし、アンデルセンは、少女が見た美しいものを誰も知らないのだということを強調していた。
それはなぜだろう?
死んでしまった子が、死の前に美しい幻想を見たことが、なぜそれほど重要なのだろう?
そして、少女は微笑んでいたのだ。

「マッチ売りの少女」と似たところのあるお話として「フランダースの犬」がある。
こちらは、ネロ少年の正直さや、パトラッシュの忠実さに心を動かされて、やはり物語の奥が見えにくい。
しかし、ネロ少年もまた、微笑んで死んでいた。彼は自分を不幸と感じていないようであった。
実際、この2つの物語は共通点が多いが、その解釈には我々日本人の感性あるいは英知が必要で、実際、「フランダースの犬」は、その舞台ベルギーや、著者ウィーダの祖国イギリスをはじめ、ほとんどの国でさほど評価されていないと聞く。

「マッチ売りの少女」の意義は、イエスの最後に匹敵するのだ。
今なお崇拝者の多い、南インドの聖者ラマナ・マハリシは、キリスト教の意義をこう言う。
「自我であるイエスが肉体である十字架に磔にされて滅び、キリストが復活した」
見事な解釈であるが、「マッチ売りの少女」も「フランダースの犬」も同じなのである。
あるいは、旧約聖書のヨブ記にも似ていると言える。
マッチ売りの少女は、極寒の中、薄着でマッチを売りに行かされる。
あやうく馬車に轢かれそうになり、母親の形見の木靴は持っていかれてしまう。
誰もマッチを買ってくれないばかりか、売り込んだ大人達に冷淡にあしらわれる。
少女は寒さと飢えに苦しむ。
しかし、彼女は誰も恨まなかったのだ。
それは「フランダースの犬」のネロ少年も同じだ。
アロアの父親に不条理な仕打ちを受け、おじいさんが死んで住処を追い出され、期待していた絵画コンテストでの優勝を逃し、八方ふさがりとなる。
それでもネロは誰も恨まず、拾ったコゼツの財布を返し、せめて老いたパトラッシュの今後の世話をしてくれるよう頼んだが、自分は空腹を抱えて吹雪の中をただ歩く。
パトラッシュは与えられた食事にいっさい口をつけず、スキを見て部屋を飛び出し、ネロを探す。
立ち上がる力もないネロとパトラッシュの前に月の光が差し込み、ルーベンスの絵を照らす。光が闇を消し去り、真理があらわになったのである。
マッチ売りの少に女は、現実と何ら変わらない想像の力が示された。
2人は死んだのではない。復活したのだ。キリスト教的にはキリストとして。
イエスも言ったではないか。「死に打ち勝つには、ただ死ぬしかない」と。
2人の微笑みは成就を現しているのである。
W.B.イェイツは言った。「愛は神の領域であり、我々は愛を理解できない。しかし、人の領域である憎しみは理解できるので、憎しみをやめることはできる。それで天の報恩に至る」と。
2人は憎しみや恨みを持ったとしても、誰にも責められないような状況であったが、そんな感情は少しも起こさなかった。
そして自我が消滅し、自分の内にあるものを知ったのである。

我々もまた、同じことができる。
食を十分に慎めば、やがて我欲が少なくなり、自我が静まる。
そして、想像の力が高まり、いつかは知る。世界が自分のものであることを。

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Comments

コメントありがとうございます。これからも頑張ってください。

Posted by: 太郎 | 2009.03.28 at 03:35 AM

★太郎さん
応援、ありがとうございます。

Posted by: Kay | 2009.03.28 at 08:10 PM

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