至高体験は簡単に起せる
絶対絶命の大事故や暴動、あるいは、犯罪に巻き込まれながら、奇跡の生還を果たしたという話が時折話題になる。
そんな時、その生還者が人生観を変えてしまっていることがある。それまでの、世間的常識や価値観の中であくせくと生きていたのとは違い、目に見えるものとは違う大きなものの存在を認め、それに守られているという信念から来る落ち着きを備え、それ以前とは全くの別人に見えることもある。
昔、立花隆さんの「宇宙からの帰還」という本を読んだことがあるが、大気圏を脱出した宇宙飛行士は、以前と同じ人間ではいられないと書かれていたと思うが、地上にいてそれが起きたようなものとも思う。
何かの啓示のようなものを受け、人生観を変えた例は、いろいろ聞いたことがある。
目の前で、犬がカミナリに打たれて死ぬのを見てそうなった者もいた。
かつてのプロボクシング世界ヘビー級王者で、無敵と言われたジョージ・フォアマンが、モハメド・アリとの試合でまさかのKO負けをした後、フォアマンは神を見て牧師になったという。その時、23歳だったフォアマンは、アリと再戦することなく数年後に引退して、ボクシングファンを驚かせたが、40歳を過ぎてカムバックし、45歳で再び世界王者になる。
では、そのような経験は、稀な幸運に恵まれなければできないのだろうか?
そのような、神秘的な体験は、作家のロマン・ロランが大洋感情と呼び、心理学者のアブラハム・マスローが至高体験(絶頂体験とも言う)と言ったものと同じか、少なくとも関係があるものと思う。
世界と自分が一体となったような没我の状態である。
至高体験は、マスローと交流のあった英国の著名な作家コリン・ウィルソンのライフ・ワークである。
マスローは、「偉大な人間とそうでない人間の差異はたった1つで、それは至高体験を持つか持たないかだ」と言ったらしい。しかし、至高体験は、偶然に訪れる幸運に頼るしかないと主張し続けていた。
だが、ウィルソンは、至高体験は誰でも経験できるばかりか、誰でも経験しているありふれたものだと言った。初めは同意しなかったマスローもそれを認め、実際に大学の自分の教室の学生達によってそれを確かめた。自分が幸運だと感じた体験を皆で話し合ううちに、そこにいる学生達に至高体験が自然に起こったのだ。
ウィルソンにいたっては、鉛筆を使ったちょっとしたテクニックで、擬似至高体験を起せることに気付いた。
鉛筆やペンの先に思い切り集中し、不意に緊張を解くということを繰り返すだけである。
しかし、食を厳しく慎む習慣を持てば、好物の食べ物を食べることを想像するだけでただちに至高体験に至る。
あれほど至高体験を追及したウィルソンも、ただ食を慎めば良いということにいまだ気付かないようである。それで彼は、昔からずっと、今でも、難しく不確かな方法しか言えないのである。
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Comments
ブログ、大変興味深く読ませていただきました。
ウイルソンの鉛筆を使った至高体験の作り方を詳しく
教えて下さい。お願いします
Posted by: 太利 | 2010.07.25 04:53 PM
★太利さん
鉛筆を使った方法は、本文に書いた通りです。
コリン・ウィルソンの「右脳の冒険」「フランケンシュタインの城」「至高体験」などが参考になると思います。
Posted by: Kay | 2010.07.25 08:59 PM
情報ありがとうございました。早速購入しました。
ここ最近、昔見たビジョンを最近良く見ます。地球の緑が無くなってポカーンとしているビジョンです。木内鶴彦さんという天文学者の方の臨死体験のレポートとたぶるので10年後はもう地球は瀕死状態?かも知れません。この至高体験も死にそうにならないと起きないものだと諦めていた所、管理人さんのサイトを見て・・ショックを受けました。
ありがとうございました。
Posted by: 太利 | 2010.07.25 09:20 PM