優しく柔らかい強さ
昔のNHKの弁慶と義経のドラマで、本当に弁慶が言ったのではないと思うが、面白いセリフがあった。
それは、弁慶が、まだ牛若丸であった後の義経に逢って敬服し、牛若を主と思うようになってからのことだ。
弁慶は妻の玉虫に言う。
「俺はな、神輿に乗るより、担ぐ方が向いてるのだ」
これは、弁慶の、牛若の家臣になるという宣言でもある。
「老子」には、固くて強いものは下にあるべきで、しなやかで柔らかい、弱くて繊細なものが上にあるべきだと書かれている。
木がまさにそうで、根は固くて強く、葉や花は柔らかく弱い。
弁慶は固くて強い。牛若は弱くは無いが、女性的で優しいのだ。
上に立つものは、優しくて繊細でないといけないのである。それを強い者が支えれば良いのだ。
一方、老子は、弱いものは実は一番強いとも言っている。例えば、水や風である。
だが、これまでの世界は、固くて強いものが上に立ち、弱いもの、優しいものは下に置かれてきたのである。
日本もすっかりそのような社会になっていたが、それは自然でないので、社会も人々も苦しく不幸になり、狂気に満ちているのである。
だが、日本は本来、老子の説くようなところを、完全ではないが持っていたと思う。
それは、強大な武士でさえそうだった。いかに実質的に日本を支配する武士であったとしても、弱いかもしれないが、優美で繊細な天皇家には敬意を示した。織田信長や豊臣秀吉、徳川家康らが、力においては相手にもならないに関わらず、皇族には平伏する映画やTVドラマの場面を、子供の頃は不思議な気持ちで見たこともあるが、それが悪いものだとは思わなかった。
ヒラリー・クリントンとバラク・オバマでは、オバマの方がずっと女性的と思う。
そのオバマが上で、ヒラリーが下に控える状態は、実はとても良いのではないだろうか。
黒人が大統領になったこともだが、こういったことにも、アメリカ、そして世界の変化が伺えるのだ。
夕食には、ライスとサーモンとブロッコリーしか食べない痩せた、新しい大統領には柔軟で優しくあって欲しいと思う。そして、その強さは、雷のようでなく、水か風のようであって欲しい。
我々もまた、優しく柔らかくあってこそ、真に強くなれるのだと思う。
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Comments
はじめまして。(27才・女性)毎日ブログを読ませて頂いております。最近、「少食」というキーワードからこのブログにたどりつき、大変、大変共感しております。暇があれば、ブログの過去までずっとさかのぼって読ませて頂いています。私も甲田先生の本も2冊ほど買って読んだり、『空腹力』という本を読んではいましたが、keyさんの少食に対するお考えが、一番私の心にしっくりと響きました。水野南北の現代語訳の本も購入予定です。 私は5才から空手道をしており、日本一を目指して日々励み、国体等に出場してきました。引退をかけた去年は死にものぐるいで毎日練習をし、一応目標タイトルはとれたので(マイナー競技ですので…)去年、無事に現代選手を引退し、今年からは指導のほうで日本一を目指したいと思っています。また、私は教員をしていますが、速読力も無く、本を読む量も少なく、知識が足りないので、keyさんの能力・知識力が本当にうらやましいです。いつもこのブログから『知の移植』をさせて頂いております。私も『少食』で「能力」も「運」も「縁」も「スタイル」(笑)もレベルを上げていきたいと思っています。そして、「優しく柔らかい強さ」を追い求めた選手生活、keyさんに見習い、少食・粗食生活で、少しでも人間的な深い意味での理解ができるようになりたいです。
Posted by: みのり | 2009.02.09 11:37 PM
大変失礼致しました! keyさん×→ Kayさん○ です!! すみません…!!
Posted by: みのり | 2009.02.09 11:51 PM
★みのりさん
初めまして。
空手道日本一達成、おめでとうございます!
長く努力を続けられることは実に立派なことであると思います。
コメントからは強い向上心がビシビシ感じられ、すっかり打ち負かされてしまいました(笑)。
もちっと力を抜いても良いような気もしますが、気力があるというのはやはり良いことですね。
少食・粗食は、あまり無理をせずに取り組まれるのが良いと思います。
私は自我が不安定な人間で、そのせいで、時々、極端な無理をする傾向があります。
大きなゆったりとした人間を目指したく思っております。
ただ、少食は今後も続けるつもりです^^
Posted by: Kay | 2009.02.10 09:52 PM
Hi,kay:). It's been a few month since the last posing. I dropped by every now and again, though. Your weblog is pretty inspiring and giving us an outstanding perspective of future earth. No matter how ludicrous or arcane they look, those predecessors you mention are truly one of a kind. Hope they will be proved to be correct eventually. Otherwise human beings will most likely destroy this planet. By the way, I've finally got Nanboku Mizuno's "Shoku wa Inochi" . Thank you for the infomation.
Posted by: Robert | 2009.02.10 10:11 PM
Kayさん、ありがとうございます。お忙しいKayさんから、まさかそんなお言葉をもらえるなんて思っていなかったので、本当に嬉しいです…! 『大きなゆったりとした人間を目指す…』またいい言葉ですね…。ありがとうございます(^_^)
Posted by: みのり | 2009.02.11 03:46 AM
★Robertさん
お久し振りです。
「食は全て」を入手されたとは素晴らしい。
この本の英訳はないでしょうから、日本語のものでしょうね。
英訳(あるいは、その他の国語訳)が出て、海外で読まれたら素晴らしいとは思っています。
★みのりさん
大きなゆったりとした人間・・・これが1つの目標です。
棺おけに入り、地下数kmに埋められたように、何を言われても平気という不動心を得たいものです。
Posted by: Kay | 2009.02.11 08:26 PM