差別が蘇る時
米国に黒人大統領が誕生したと言っても、米国はもちろん、世界に人種差別が無くなったわけではない。
少なくとも、人種差別問題に関する大きな発展があったと見る向きも多いと思うし、表面的には確かにそうだ。しかし、今後、深刻な問題が発生する可能性がある。
1970年頃の英国のSFテレビドラマ「UFO(邦題は「謎の円盤UFO)」で、この問題を非常に鋭く指摘する話がある。
このドラマの製作者は、「サンダーバード」で有名なジェリー・アンダーソンだ。サンダーバード以前にも、アンダーソンは人形劇ドラマを作っているが、その中で、黒人の人形を使おうとしたところ、番組側から強制的に白人の人形に変えられたことがあったそうだ。
さて、「UFO」は、当時から言えば近未来である1980年を舞台とした、人類と宇宙からの侵略者との戦いを描いた、今尚人気のある特撮SFで、アンダーソン初の俳優を使ったドラマだ。
月面基地の白人の司令官が事故で死んだと見なされ、新しい司令官が必要になる。ストレイカー最高司令官は、黒人の大佐に司令官就任を要望する。
「驚いたかね?」
「いいえ。話があることは分っていました」
「そうか。では返事は?」
「私が断ったらどうします?」
「やる気がないのか?」
「いいえ、あります。それに名誉にも思っています」
「いったいどういうことだね?意欲もあり名誉だと言いながら、君は断ると言う。説明したまえ!」
「分りませんか?私の肌の色です」
「馬鹿な(意識的な苦笑)。人種差別など、5年も前に無くなったはずだ」
「表面的にはその通りです。でも、危機的状況になれば、必ずそれが問題になるんです」
現在は、オバマ大統領は始まったばかりで、全米は熱狂している。
しかし、時が経ち、オバマが期待を裏切ったと感じた時、白人大統領の場合より否定的な感情が発生する可能性が高いのである。それは、憎しみにまで容易に発展するかもしれない。
おそらく、オバマ大統領もそれは覚悟していると思う。
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