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2009.01.06

出来損ないの脳も食の慎みで治まる

春日大社の宮司である葉室頼昭さんの「神道 "徳"に目覚める」という本に、人間の脳は、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類の全ての脳を持っているということが書かれている。葉室さんは医学博士でもあり、形成外科で世界トップクラスの医師だった。
これらの生物の脳を、人間らしい理性を司る新皮質が覆っているのである。
同じことを、ハンガリー生まれの英国の科学ジャーナリストであるアーサー・ケストラーの「ホロン革命」という本で読んだことがある。ケストラーは、アインシュタインをして「神様よりも何でも知っている人」と言わせる天才であった。
しかし、ケストラーは、人間の脳は出来損ないで、新皮質が動物の脳をコントロールできないと、悲観して自殺してしまった。
なるほど、食欲、性欲、あるいは、攻撃・破壊欲にとりつかれると、理性でそれを抑えるのは容易ではなく、ほとんど不可能であるかもしれない。

この脳の話は、有名なマズローの「欲求段階説」とも符合し、合わせて考えると面白い。
欲求段階説とは、人間は、低レベルな動物的・本能的欲求を満足させることで、より高度な欲求を持つというものだ。
例えば、まずは食欲、性欲を満足させることで、次に安全の欲求を持ち、それから、集団への帰属欲求、さらに、自我の満足欲求(賞賛欲求)と進み、最終的には、理想の人間になりたいという自己実現欲求を持つ。
食欲、性欲は魚類・爬虫類にもあるし、安全・集団帰属欲求は野生動物も持つ。このあたりの欲求しか持たないなら人間とはいい難く、自我の欲求を持つことで、初めて最低限の人間になる。それは、仕事や学問で優れた業績を上げるためにがんばるといったことが出来るということだ。

ただ、問題として、ケストラーが言うのは、人間的な欲求であっても、下等動物脳の影響を強く受けるということだ。
例えば、自我欲求は、良い方向に現われれば良さそうなものであるが、ちっぽけなプライドが傷付けられただけで異常な怒りを持ち破壊的になるというのは、自我は新皮質にあるとしても、下等動物の脳の影響を受けるからである。強力な軍隊を動かせる人間は、高度な理性を持つべきであるが、実際は、そんな人間が低レベルな見栄や怒りで破壊行動を起すことは珍しくはない。それは、核ミサイルのスイッチを押す権限を持つ人間でも例外とは言えないのである。そもそも、広島や長崎に原爆を落とす決定をした者の判断は、決して理性の導き出せるようなものではないはずだ。つまり、獣の破壊本能に支配された人間が米国のトップであったのである。

しかも、近年の、特に日本では、人々は食欲や性欲を異常に増大させ、それを満足させることばかり考えるあまり、下等動物脳に支配された異様な自我を増長させた人間だらけになったと言えば納得できるかもしれない。
動物の本能はシンプルであり、余計な望みは持たず、お腹が満たされれば猛獣といえども他の動物を襲わないし、さらに、天敵に殺され食われることもまた快感であるのだが、人間は全く違う。
フロイトは、人間は本能が壊れているので自我を作ったが、それは自然に立脚しない幻想のようなものと言った。しかし、それはあまりにも新皮質の性質を無視した考え方であろう。新皮質が下等動物脳を支配下に置けば、フロイトと決別したマズローの言う自己実現に至るし、そうでないと人は幸福になれないのだ。
このことに薄々気付いていた人もあり、ナポレオン・ヒルは性欲のコントロールを提唱し、ディール・カーネギーは正しい努力で自我欲求を目指すことを説いた。しかし、彼らの考えは誰も幸福にしなかったと言える。彼らの考え方は、あまりに即物的、唯物論的であったと思う。
確かに、偉大な人物というのは、性欲を支配し、努力して自我欲求を出来るだけ健全に満足させたかもしれないが、成功者達には、彼ら独自の方法があったのだ。
人間は意思の力だけでは性欲のコントロールなんて出来ないし、自我欲求というのは、あくまで賞賛を求めるものであり、さして理性的なものではない。
だが、食を慎むことだけは特別な意味を持つ。
水野南北が、人間の運命はただ食の慎みによってのみ決まると言ったのは実に確かなことである。
食を慎めば、全てを慎むことになる。現代の日本人の異常性欲は、全て栄養の取り過ぎから起きている。そして、飢餓への恐怖と性の欲望と新皮質の想像力が結びついて攻撃的になり、自己中心的になっているのである。
ただ食を慎むことによって、自然に自己実現への素地が整うのである。

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