飯島愛さんの忘れられない言葉
飯島愛さんのことで憶えていることが1つある。
バラエティー番組のごく一時に「見せたくないけど、見せないと仕事をもらえない」と、決して楽しくなさそうに言ったことだ。
セクシータレントであった彼女に対し、「見せて当たり前」「恥ずかしいはずがない。むしろ喜んでいる」という思い込みが我々にあったはずだ。また、「プロなんだからやって当たり前」という意見もあろうと思う。
そして、昔の飯島愛さんにとっては、「他に出来る仕事がない」という思いがあったことも感じさせる。
映画の「ロッキー」の2作目だったかもしれないが、ロッキーが引退を決意し、就職活動をするが仕事が見付からず、職業相談所の職員に「あなたは有名なボクサーなんでしょう?試合すればいいじゃないですか。」と言われる場面がある。しかし、ロッキーはもう、ボクシングに燃えるものがなく、平穏に過ごしたかったのだ。
プロレスのジャイアント馬場さんが、インタビューで、「猪木さんが国会議員をやったり、いろいろな仕事に手を出している成功したプロレスラーもいる中で、プロレス一筋でやっている訳は?」と聞かれ、「本音を言えば、他に何も出来ないから」と答えていた。実際は、馬場さんは偉大なプロモーターだと誰しも認めているし、結構多才な人だったが、それもプロレスあってこそという気持ちと、彼らしい謙虚さがあるのだとは思う。
しかし、その馬場さんも、目標とか夢の話となると、「やめることが目標かなあ」とか「引退して、のんびり朝食を食べられる生活」、あるいは、「ちゃんと絵の勉強をして画家になりたい」といったものばかりで、あまりプロレスでの目標とか夢を語ることがなかったように思う。まあ、これも、何度も世界最高峰のNWA世界王者になり、いくつかのタイトルの記録的な防衛を達成するなど、やることをやり尽くしたからと考えることもできるが、スタート時点からして、好きで始めたプロレスでなかったことも確かであった。
人は誰も、本当に自分のやりたいことは出来ないものだ。
「好きなことを仕事にすれば良い」と言う人も多いが、無責任なのではと思うこともある。
しかし、飯島愛さんのあの発言は考えさせられた。女性なら恥じらいがあって当たり前だが、仕事のせいでそれを無視されていたところは確かに大きいと思う。
「荒野の7人」という有名な映画で、盗賊集団のボスが、「俺の立場も考えてみろ!子分達を食わさなきゃならねえんだ」と言う場面が非常に印象的だった。欲望の赴くまま好き放題に生きる彼にも、確かにそんなところはあるのだろう。
擁護する気もないが、食品偽造や、違法建築をやった会社の社長にも、社員の生活を支えないといけないという親心も全くなかったわけではあるまい(と思う)。
「ノワール」というアニメ作品で、ミロシェという名のチェコソロバキア人の傭兵(雇われ兵)の青年は、汚い仕事専門の外人部隊で活動し、勲章までもらったが、人殺しが楽しいはずもなく、再度、志願すべきかどうか悩んでいた。しかし、ヒロインの少女、霧香に言う。「志願することにしたよ。どうせ他に俺に出来る仕事はない。分ってたんだ」
生きることは辛いものだ。
さっきも書いたが、自分の好きなことを楽しくやって生活できる人なんて極めて少ないか、実際はいない。でなきゃ、成功した人が麻薬に手を出したり、法に触れるようなことをするはずがない。
よく「夢を忘れないで」とか言われることがある。とんでもない。夢なんて持っちゃいけない。
これは、ニヒリズムでも何でもない。
本当の夢なら良い。例えば、世界平和とか・・・(笑)。
しかし、単なる目標であるなら、持たない方が良いのだ。
なぜなら、あなたはほぼ百パーセントの確率で国家の経済的支配者や、これに結託する大企業などの資本主義社会に洗脳されているからだ。そこから生まれる目標なんて、自分や世の中を地獄にするのに加担するものしか出てこないからだ。
だから、神様仏様に全ておまかせすれば良いというのは、案外に科学的なのだ。
そこには、自我というものはない。そうであるなら、我々の内部にある神秘としか思えない力が働く。そうすれば、不幸になどなるはずがないのである。
この神秘の力は、実に我々の予想以上に神秘で強大であり、これも神や仏の力の一部であろうと思う。古代インド哲学ではアートマン(小宇宙)とかいうが、現象としてはそのように考えても良いが、実際には大宇宙とも等しいものであろう。
そうであるなら、我々を幸福にすることくらい、お茶の子済々である(笑)。
ただ、いかなる形で我々を幸福にするのかは分らない。「浜崎あゆみのような歌手が目標だ」なんて言ってるから駄目なんだ。それは、神仏におまかせしたことにはならない。
全て放棄である。自我の消滅である。
フロイトは、自我は自然に立脚しない幻想であると言った。それなら捨ててしまおう。
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