芸術とは波を作り出すことだ
かつて、ノベルという会社は、コンピュータネットワーク分野で(正確にはネットワークOS分野)マイクロソフトを圧倒的にリードし、大きな市場占拠率を得ていた時代があった。その時のノベル社の社長の名前は忘れたが、コンピュータ雑誌に載っていたその社長の言葉はよく憶えている。
「流れに乗れなければ滅び、流れに乗れば生き残れる。そして流れを作り出せば勝てる」
そんな言葉だった。
その後、ノベルはマイクロソフトの追い上げを受けて破れた。マイクロソフトは強引に流れを作って勝ち、ノベルは流れに乗ることで現在も生き残っている。
マイクロソフトは一部で思われているような愚鈍な恐竜ではない。流れを作り出す革新性こそが同社の武器であったし、これからもそうだ。
しかし、グーグルは強力な波を作り出して圧倒的な勝利を得、IT世界の派遣を狙っている。帝王マイクロソフトもまだまだ負けないにしても、グーグルは脅威であり、新しい流れを作り出せなければ没落しかないのも確かである。グーグルだけに負けるのではなく、Java、リナックス、オラクルといったこれまで抑えてきた勢力や、SaaSという新しい波によってたかって攻め込まれることになりかねない。王者というものは実に大変である。
新しい流れを作り出すのは大変なことだ。
しかし、芸術というのは、新しい流れを作り出すことが宿命と思う。
ピカソは常にそれまでの自分を打ち破り、自分の芸術を革新し続けた。ピカソの代名詞であるキュービズムでピカソの芸術が完成したのではなく、ピカソはそれすら破壊して先に進んだ。80歳を過ぎたピカソが10ヵ月ほどで制作したエロチカ347シリーズは、老いぼれピカソの遊びと揶揄されることもあるが、さらに後の156シリーズと併せ熱心に収集した池田満寿夫さんがこれらを語る時の狂気とも言える異様な熱意(池田さん自身は、ある種の芸術家達と違い、自分に狂気は無いと言っている)は、これが究極の芸術であると感じさせられる。それは世間の評価とはまるで関係のない話と思う。いや、世間に評価されてはいけないとすら思う。世間の評価を信じるくらいなら、私は独断であっても、まだ池田さんを信じられる。
岡本太郎さんは、人生即芸術と言ったが、芸術でない人生は本物の人生ではないと言えると思う。人生は自分で波を起こさないといけない。また、岡本太郎さんは、本日ただいまより、あなたも芸術家になれると言った。世間の幻想を打ち破り、自分を破壊し、自分で波を作り出すことは誰にでもできるということと思う。
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Comments
こんにちは。
書道って、芸術だと思いますか。
Posted by: 吹雪 | 2008.08.31 07:08 PM
★吹雪さん
こんにちは。
単にそう聞かれたら、さあとしか答えようがありませんね。
Posted by: Kay | 2008.08.31 08:02 PM
文字をうまく、みたいな程度だと芸術じゃないかも。
表現するため、という目的意識であれば初動はもちろん、なんでも芸術になると思いますよー。
Posted by: hideto | 2008.08.31 08:54 PM
お久しぶりです♪書と日本画こそは、日本で世界に通用する芸術だと思っています。私自身は書をたしなみませんが、いい書を見るといつも惚れ惚れしています。崩しと間の取り方、勢いなど、学ぶものが多いです。
それこそ、書こそは、波に乗らないと書けないのでは?
話は変わりますが、まったく波打たない広大な湖面を見たことがありますか?それ自体が奇跡で芸術なのですが、その全く波立たない湖を泳いで、自分だけが波紋を作り出すと、それもまた感動的です。
Posted by: 石彫人 | 2008.09.01 08:25 AM
あらら、書の話が続いているのですね^^;
私は、この世のあらゆるものに芸術である資格があると思っています。そして、書や絵画に芸術を名乗る特権があるとも思っていません。
このあたりはhidetoさんと同じですね。
上手い下手は何の関係もないと思いますし、むしろ上手い絵画等には思いっきり芸術から離れたものが多いように感じます。
ただ、そうなると、「芸術とは?」という話になるのですが、それは長くなりますのでおいおいということで・・・^^;;(過去、かなり書いたのですが)
ただ、芸術には訴えずにはおかない強いメッセージは必要かなと思います。岡本太郎さんはそれを呪術的と言いましたが、横尾忠則さんは、呪術なんて言わない方が良いなんて言ってましたね(笑)。でも、世界に訴えたいことのない芸術家はいないと思います。
★石彫人さん
オーフリッドの湖ですか?
石彫人さんのHPやブログを読むと、その感激が伝わってきましたよ。
今度連れてけ~♪(笑)
ちなみに、私がこれまで見た最も美しいものは、愛する人と見る夕陽・・・と言いたいところですが、夢の中で夜空に浮かんでいたマンダラでした。あれ以上美しいものを見ることはないと思いました。私の日頃の善行に対する神の御恵みか・・・^^;
Posted by: Kay | 2008.09.01 09:47 PM