全ての成功哲学、運命学は枝葉である
人間は、生まれてきたからには幸福に生きたいと思うものであり、何を幸福とするかは人それぞれであるのだが、概ねは、健康で、物質的な豊かさ、栄達、そして愛情に恵まれることを願うものと思う。
それを実現するための教えが書かれた本が、現在では実に多くの種類が誰でも簡単に入手できる。それらは、古代から伝わる賢者の書や著名な思想家、学者が書いた非常に格式を感じさせるものもあれば、とても気楽な感じのものまでいろいろだ。
今は、「引き寄せ」とか「キー」とかが流行のようであるが、かなり以前からある、ジョセフ・マーフィーやナポレオン・ヒルなどもまだまだ人気があり、もっと以前からあったサミュエル・スマイルズの修養書は今も評価が高いし、ジェームス・アレンは次々翻訳され、最近になってようやく翻訳されたウォレス・D・ワトルズは同じ本がいろいろな人が翻訳する人気振りだ。他にも人気のあるものがいくらでもあると思う。
また、様々な占いや運命学も昔から現在に至るまで、多くの人々の心を捕えている。
これらのほとんど全ては良いものであると思う。
しかし、いかに優れた内容であっても、やはりこれら全ては枝葉であり、根本ではない。
枝葉をいくら熱心に学んでも、根本がしっかりしていなければ何らの発展もないものである。
そして、不思議なことに、根本を直接説くものは極めて少ないのである。
江戸時代に、水野南北という有名な観相学者がいた。観相学とは、顔や手、あるいは、身体の各部の形状や肌などの色その他の様子で運命を鑑定する技術である。水野南北は顔はもちろん身体中のあらゆる部分で鑑定を行った。水野南北は最初から学問的に観相を学んだのではなく、頭の形を見るために髪結い、身体を見るために風呂屋、さらに死体をも観察するために死体焼場の仕事すらしたようだ。学問はしなかったが、ある時には、有名な学者に口伝してもらったともいう。いつしか名声は高まり、皇室からも鑑定の依頼を受けるようになり、観相学的には彼は、貧窮、短命の相で、若い頃は投獄されるほどのやくざ者でありながら、当時としては非常に長命な78歳まで生き、蔵を7つ建てる程の長者となった(昔は金持ちになったことの証を「蔵が建つ」と言った)。
その水野南北は、ある時から相談に来ても観相の話をあまりしなくなった。観相は枝葉に過ぎず、相が悪くても自分で良くすることができ、逆に相が良くても何の意味もないこともあると言う。そして、唯一と言って良い根本とは、ただ食を慎むことであると言う。
水野南北は、いかに観相学を極めても百発百中といかないことに悩んでいたが、根本が食であることに気付いてからは百発百中、外れることはなかったという。
水野南北は、一般には断食を薦めたり、3度の食事のいずれかを抜けとは言わなかったが、少食、粗食をする大切さを、その原理と共に力説し、それが仏教の教えに沿うことも付け足した。
なるほど、いかに「引き寄せ」「キー」関係の書を熱心に読み、その通り実践しても、あるいは高額な成功教材を使っても、たらふく食べていては成功するはずがない。
そのようなものは一切学ばなくても、食を節制すれば何事もうまくいくというのが水野南北の教えである。
水野南北の「相法極意修身録」(現代語訳は玉井礼一郎訳「食は運営を左右する」)にそのあたりのことが丁寧に書かれているが、この本は今は古書でしか入手できない。こんな良い本が出版され続けないとは日本も終わりであるかと思うほどである。
日本は、農業、漁業を軽んじ、食料自給率が極端に低い異常な国である。そして、経済力は確実に衰えてきているが、そもそも国民が真面目に働かなくなってきた。そんな状況で、いつまでも食料の大量輸入ができるはずがなく、飽食を続ける者は悲惨となると思う。今こそ、少食、粗食、あるいは不食を実施し始める時であり、それにより、我が国は経済大国ではなくても強く平和な国となると思う。
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Comments
小食が根で、引き寄せが幹ですかね~?
あ、キーといきなり出したからあれですけど、売れたのはシークレットです。
キーはそれを補う本で。
次の時代へのパラダイムシフトは、エコでもロハスでも自己実現でもなく、小食かも知れませんね!
ただ、3つの原理の理論によると(ローレンス・トーブさんの理論です)次は自己実現なので、その後かも知れませんが…これは数十年続くようです。
残すのは命を無駄にする感じなので、あんまり実践できませんねぇ。
後、体調悪いんじゃないかとか、疑われたり…めんどうなことが増えたりで大変です(^^;
まあ、少ーしずつ減らせるようになんとか工夫してみます。
Posted by: hideto | 2008.08.31 08:53 PM
★hidetoさん
いえ、少食が根本、即ち、根と幹です。
引き寄せは単なる枝葉です。なくてもいいか?
ザ・キー、マスター・キー、成功の鍵・・・、タイトルにキーを付けるのは流行のようです。
いろいろありますが、お菓子なら、「食べない」を何度か言うと諦めてくれると思います。
Posted by: Kay | 2008.08.31 10:09 PM
はじめまして。
kayさんの、人間の本質をつくような記事はいつも興味深く、楽しみに拝見してます。
私も甲田先生の本を読んで以来、厳粛ではないにせよ、少食、朝食抜きに取り組んでいます。
バクバク食べていたころ昔に比べると、頭が冴えているような気がします。
顔つきもなんとなく精悍に(笑)
甲田先生は今月亡くなられましたが、彼の残したことは偉業ですね。少食と健康との結びつきを多くの人に教えてくれましたから。
初めて著書を読んだときは、トンデモ理論だと思いましたが・・・
甲田先生は83歳というお歳で天に召されましたが、人生のその内容はとても充実していたことと思います。
Posted by: 無常 | 2008.08.31 10:49 PM
★無常さん
はじめまして。
甲田先生が亡くなられたのですか?全く存じませんでした。
残念なことです。医者でありながら、現代の栄養学や医学の権威をものともせずに正しいことを実践する方が、はたして他にまだいるのか?
私は、正直言って、甲田先生のやり方をそのままやろうとは思っていませんが、素晴らしいきっかけを与えてくれたのは確かです。
83歳くらいで亡くなるとは思いませんでしたが、おそらく過労だったのではと思います。
とりあえず、私はますます少食に磨きをかけよう(?)と思っております。
Posted by: Kay | 2008.08.31 11:10 PM
「食は運命を左右する」ですがAmazonで新書の扱いはありませんが
クロネコのブックサービスでは扱っている様です。
私も以前クロネコから購入しました。
大食いの有害性や粗食の有益性が多くの人に理解されたら
まだまだ日本もうまくやっていけると思います。
マスコミを鵜呑みにしないいい傾向もあります。
アメリカはますます肥満が増加しているそうです。
2008年度版アメリカの肥満人口を表した地図 - GIGAZINE
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080704_fattest_states_2008/
世界の国を肥満率の高い順に並べるとこうなる - GIGAZINE
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070518_fat_list/
Posted by: market_3e | 2008.09.01 01:01 AM
★market_3eさん
をを!ブックサービスにありますね♪
貴重な人間医学社の「南北相法極意修身録」も受注を受け付けていましたので、早速注文しました。
ありがとうございました!
Amazonだけがネット通販ではありませんね。
おや、日本人はまだこんなにいけるのですか?
肥満の人が多いように感じますけどね。すると、アメリカはもう最後ですかね^^;
Posted by: Kay | 2008.09.01 09:43 PM