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2008.06.15

平安を恐れる男たち

DVDで、「南から来た用心棒」という映画を見た。
1966年公開のマカロニウエスタンで、主演は27歳くらいの若き日のジュリアーノ・ジェンマだ。
映画界には、どの国にもとびきりのカッコいい男優は過去から多くいたが、個人的にはこのジェンマほど格好良い男はいないと思う。顔は超美形とはいえないかもしれないが当然ハサンムでイキでとても味がある。若い頃からこれほどの哀愁も貫禄もある俳優は少ない。最近の「イケメン」という表現を使いたくない俳優だ。
非常にスタイルが良い上に、運動神経が素晴らしく、動きがしなやかで格好良い。仰向けに寝転んだ状態から脚の反動で後頭部を支点に跳ね、すっと立ち上がる動作は有名で、私も高校時代にマスターしたものだ(笑)。

さて、この「南から来た用心棒」というタイトルは、日本独自のもので意味はない。
原題は「アリゾナ・コルト」で、ジェンマ演じる流れ者の凄腕ガンマンが名乗る名前だ。
広大な砂漠のあるアリゾナと、リボルバー(回転式拳銃)の代名詞であるコルト(銃器メーカー名でもある)を名前にするところが実に大胆で格好良い。
アリゾナ・コルトは流れ者のガン・マンで賞金稼ぎ。銃の腕は凄いが、イカサマポーカーの腕も凄いヤクザな男でもある。
だが、なりゆきもあり、ある町で強大なならず者集団と戦い、町を守って英雄扱いされ、町の美しい娘ジェーンとも相思相愛となるが、彼は一人で町を出て行く。視聴者は、「なぜ?」と思うと同時に「これがアリゾナ・コルトだ」と納得するに違いない。

小椋桂さんの歌に「また旅支度」というのがあり、歌詞の中に、「今この街もいいことばかり。なぜまた旅支度」「苦しみだけが待つ道のりを。なぜまた旅支度」というフレーズがあるが、ちょっと思い出す。

アリゾナ・コルトのような男は安住を恐れるのだ。常に不安定な状態に自分を置いておきたい。愛しい女もそれを止めることは出来ない。
旅は強制的に不安定な状況を作り出す。生きている実感を得るためには不安定さこそ必要だ。
「人間は安定を求めた時、生きることをやめるのですね」
かなり幼い頃に見た漫画の美女の言葉で、タイトルも憶えていないが、このセリフはよく憶えている。

ハンス・クリスチャン・アンデルセンも、作家として成功した後はずっと旅を続けた。なぜそこまで旅をするのか?彼の自伝を一度読んだだけでは理解できなかった。だが、旅で見たものの描写の面白さは間違いなかった。
W.B.イェイツは、旅こそしなかったが、年を取っても、決して平安を求めず、むしろ狂気を求め続けた。不良老人で在り続けた。抒情詩を書く詩人が押並べて若い中で、彼はいつまでも鮮やかな抒情詩を書いた。そして病床にある死の10日前にすら優れた詩を残した。
ピカソは「芸術家の青春は60歳だ」と言ったが、80過ぎてもとんでもない不良老人であった。

どうも人間は、いわゆる自分らしく、熱く生きるためには安定や安住、平安は避けねばならぬものらしい。

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Comments

Kayさん こんにちは蒸し暑い日が続いています。いかがお過ごしですか?
私の大好きな西行も漂白の歌人として、一生を旅に住んだ人です。
お釈迦様も妻子を捨てて旅に出たのですよね。
いい男は旅に出ちゃうものなのだろうか・・・・?

Posted by: ほのか | 2008.06.18 06:24 PM

★ほのかさん
ここ数週間、仕事がハードでへばってます^^;
私は暇なのが好きなのに・・・(笑)
をを!西行!!
ぞわ~とロマンが湧き出てきます。ボーフラのように(こら)。
私は円空が好きですが、西行にも取り組みたいですね。今はあまり知りません。

そう!いい男は旅に出ます。
コルト1丁腰に下げ、男荒野の一人旅♪
・・・って、危ないヤツだよ、いまどき!!
ただ、私もそうしたいという願望はやはりあります。きっと、各港ごとに絶世の美女を待たせることとなるでしょう・・・

Posted by: Kay | 2008.06.18 10:18 PM

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