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2008.03.31

葵の紋所はこけおどしの幻想だ

歴史に興味のない人でも「葵の紋所」と言えば、徳川将軍家の家紋であるとご存知と思うし、それはどうも、「水戸黄門」のテレビ時代劇のイメージがあるのではないかと思う。
この不滅の人気時代劇の葵の御紋の扱いは極端なワン・パターンだ。
ドラマの終盤あたりで、水戸の御老公様の、「角さん!助さん!こらしめてやりなさい!」の号令と共に、いつもの調子のいいバックミュージックが始まり、角さん、助さんやそのお仲間達が、大勢の悪者達を相手にファイティングを開始する。その強いこと強いこと。「負けるんじゃないか」といった心配は800パーセント無用だ(笑)。お銀さんのミニスカのキックが出ると、もうほとんど敵をナメている。ジイさんの黄門様も、時々杖でバシっと決める。
そして、適度なところで、黄門様のいつもの声がかかる。
「もういいでしょう!」
それを合図に、角さん、助さんが偉そうな太い声で、「控えおろう!」を連呼する。
で、角さん、助さん、どっちの役かは存ぜぬが、どちらかが、「この紋所が目に入らぬか!」とすごみながら、懐から、葵の御紋が描かれた印籠を取り出し、悪者共に向かってはっしとかざす。ここで悪者共は目を丸くして驚く。角さんか助さんの朗々たる声が続く。
「ここにおわすお方をどなたと心得る!恐れ多くも前(さき)の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!」
前(さき)の副将軍とは、フォーマー・バイス・ショーグンである(なんで英語(笑))。
慌てふためく悪者達。もはや戦闘どころではない様子だ。
そして、角さん(か助さん)のトドメの言葉。
「御老公の御前である。頭が高い!控えおろう!!」
悪者達、一斉に「ははー」と土下座をする。
後は、すっかりビビった悪者達に御老公様が老人とは思えない記憶力で、つまることもなくその悪事の一切を口述する。悪者は、一度は、「お言葉ですが」と反抗し、黄門様もわざとらしく、「ほう、身に憶えがないと申すか?」と問うと、悪者もここぞとばかり、「はて、何のことかさっぱり」「何かのお間違いでは」「そこの者達(被害者)の戯言でございましょう」とふてぶてしさを見せる。そこで黄門様は「だまらっしゃい!」と一括し、証拠や証人を差し出す。ここでほとんどの悪者が、がっくりと崩れ落ちる。

長々と失礼した。私もかなりの黄門マニアだ(笑)。
もし、上記のシーンがそれなりに思い浮かぶようであれば、是非次のような展開を描いて欲しい。
葵の御紋の入った印籠をかざし、「頭が高い!控えおろう!」と、すっかりいい気になっている角さん(か助さん)に対し、ワルサーP99をぶっ放して、葵の印籠を吹っ飛ばす。
そして、黄門グループを叱る。
「権威を振りかざす者がいるから悪が生まれるのだ。権威を盲目に受け入れる者がいるから、人は差別をし、欲望を貪り、恐れ苦悩するのだ。悪の元凶よ、去れ!」

葵の紋所に「ははー」とひれ伏すことを愚と認識して欲しい。自然や生命の偉大さに比べ、たかが人の作った、それも単なる幻想である。幻想に力を与えることが人の不幸であるのだ。
本来のあなたは幻想を超えている。自分に劣るものにひれ伏す必要はない。このこと、くれぐれも忘れることなかれ。

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Comments

う〜む、おっしゃりたいことはよく分かるんですけど、実際にワルサーP99をぶっ放されて「悪の元凶よ、去れ!」と言われて黄門様が去っていっちゃったら困りますよね。目の前の悪人がはびこっちゃって。

「水戸黄門」という番組は、葵の紋所にひれ伏す形にはなっているけれども、月川は、この番組は悪を退治するヒーロー伝説の一種だと理解しています。お茶の間の観客にとっては、悪を懲らしめるのはウルトラマンの「力」でも、弁護士の「法律知識」でも、黄門様の「権威」でも、なんでもいいんじゃないかなと。

だから、黄門様が権威をふりかざして悪い事をなさったら、テレビを見ている視聴者にだって、間違ってるのは黄門様の方じゃんってちゃんと解ると思いますよ。

Posted by: 月川拓海 | 2008.04.01 01:02 PM

>月川拓海さん
すまぬ。そういう視点の話ではないのだ。
しかし、いずれにせよ、コメントありがとう。

Posted by: Kay | 2008.04.01 10:22 PM

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