勇気と英知の言葉
パイオニア(先駆者)達は、感動的な言葉を残すことが多いし、そうあるべきであろう。
もっとも、その言葉が正確に伝わることも少ない。特に昔であれば。
1961年4月、ボストーク1号で人類初の宇宙飛行を行った旧ソ連のユーリィ・ガガーリン大尉(飛行中に、彼は少佐に昇進)の有名な言葉「地球は青かった」は、何の変哲もない「そのまま」の表現ではあるが、とにかく誰も見たことのないものを確かに、そして、恐らくは感動と共に見たのであり、歴史的な言葉に値する。
もっとも、これはガガーリンの正確な言葉ではなく、実際はもっと詩的で高尚な言葉であった。それはWikipediaによると、「地球は青いヴェールをまとった花嫁のようだった」であるらしい。私なら、圧倒的にこちらの表現が好みなのだが。
ガガーリンは、それから約7年後、操縦していたミグ戦闘機が墜落して死亡する。
同じく、旧ソ連の人類初の女性宇宙飛行士、ワレンチナ・テレシコワの、「私はカモメ」も有名だ。日本でも、小学校の教科書にも採用されたこともあり、よく知られているが、よく考えれば妙な言葉である。「カモメ」とは、単にテレシコワの個人識別用のコールサインであった。
実はこの言葉は、通信機器のトラブルで地上との交信ができなくなったテレシコワが、パニックを起して「こちらはカモメ、応答願います」と不特定の通信チャネルで喚きまくったものを、多くの世界中のアマチュア無線で受信され、何か分からないが、素晴らしいメッセージだと誤解されただけのものであるらしい。
尚、テレシコワは現在も健在である。
宇宙開発で旧ソ連に遅れを取った米国は、ガガーリンの有人宇宙飛行成功の翌月である1961年5月、ケネディ大統領が、60年代中に人類を月に送る(そして、安全に帰還させる)計画を発表する。
そして、期限切れ間際の1969年7月、月の「静かの海」に降り立ったニール・アームストロングの
"That's one small step for man, one giant leap for mankind."
「人間には小さな一歩だが、人類にとっての大きな飛躍」
という、どうも訳の分からない(笑)言葉は、彼の実際の通信記録として世界中に知られた。これは、アメリカの見事な演出と思う。
アームストロングも、現在も健在である。
尚、アームストロングが月面から離陸するちょうどその頃、ソ連の無人月面探査機ルナ15号は月面に墜落している。
さて、次は、アメリカのアーレス宇宙船により火星に到達した人間が、どのような言葉を発するのか、実に楽しみである。
「そこに最初に立つ者が口にする言葉は長く歴史に刻まれることでしょう・・・
それはロボットではなく、人間の勇気と知性からこぼれる感動の言葉であるべきではありませんか?大統領閣下」
~「8マンインフィニティ」(講談社)第5巻。谷博士のケネディ大統領への言葉~
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Comments
素晴らしい!
私が全然知らない知識です^^;
勉強になりましたよ
セミナーにポイッと・・
Posted by: ヒデピョ~ン。。 | 2008.02.11 01:20 AM
いやあ、私も知りませんでした!(え?)
Posted by: Kay | 2008.02.11 08:17 PM