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2007.11.16

爆発

岡本太郎さんは「芸術は爆発だ」と言ったからには、責任を持って彼の作品を見た人に爆発を起させてくれるのだろうか?
しかし、芸術は爆発であるのだが、爆発への誘いに過ぎない。
時間もかかる。岡本太郎さんは時間については何も言わなかった。一夜でスーパーマンになれるわけではない。
また、爆発の欠片を感じても、それは長続きしない。人は永久にエクスタシーの中に居たがるが、そんなことをすれば人間の脳は焼き切れてしまう。
だが、時間に関して言えば、ドストエフスキーは作中人物に「あの5分と全人生を引き換えにしていい」と言わせたくらいだ。
芸術は人の内面に作用する。芸術を通し、人は自己の内面に目を向け、内面に深く深く潜って行く。自己という海の底に潜り、やがて真珠を見つけるようなものだ。
だがそれは、統御された潜行である必要がある。
覚醒剤を使えば、隠された内面の扉1つくらいは開けるかもしれない。しかし、それは、メスカリンを使って巨大伊勢海老に追い回される幻影を見たサルトルのようなことになりかねない。

岡本太郎さんは、「爆発」を「生命が開ききって、宇宙にぱーっと広がること」と言ったが、何のことか分からないだろう。言葉を超えたことを敢えて言葉で言えばこのようになるのは仕方がない。しかし、体験してしまえば、「爆発」とは実に適切な表現と分ると思う。
ロマン・ロランは、大洋感情という言葉で「世界と一体となった没我の状態」と言ったし、エイブラハム・マスローは、至高体験というものを・・・彼は頭が良すぎてやたら複雑な表現をしたが、英語では至高体験はPeak Experienceで、どちらかというと「絶頂体験」とでも言った方が良い。性的な絶頂感と同種であり、説明の必要もない。マスローと生涯に渡って親交のあった英国の作家コリン・ウィルソンにとっても、至高体験の探求がライフワークであるが、彼はこれを「自分が幸運である」と強い感情を伴って確信することであると言ったようだ。
ただ、ジクムント・フロイトによると、これは逃避的リビドーに過ぎず、ロマン・ロランの言う、没我や世界との一体感も、幼児以前の母親との一体感への退行であるとし、やはり、性的リビドーを逃避的に作用させた結果とする。芸術における世界的名著「魔術的芸術」の著者はフロイトを大変に崇拝していたというのに、フロイトの芸術観とはなんともつれないものである。ただ、フロイトは精神医であり、年がら年中、不健康な精神の持ち主ばかりに接してきたことを考慮する必要がある。フロイト自身は、文書においては秀でた美文を書いたらしいが、芸術観についてはかなり歪んでいたと考えて良いと思う。

単に上手い画家の絵で爆発は起こらないのだろう。上手い絵、綺麗な絵、心地よい絵を人々は有り難がるが、それは芸術ではない。だから岡本太郎さんは、芸術は上手くてはいけないし、きれいであっても、心地よくあってもいけないと言ったのだろう。たまたま上手い、綺麗、心地よいのは別に構わないだろうから、要はそういった要素と芸術は全く別物という訳と思う。あるいは、上手く描くことを第一義としてはいけないということでもある。芸術ということにかけては、腕前を誇るなど愚の骨頂であろう。上手いということにかけても天才だったピカソが、岡本太郎さんに、「毎年下手に描けるようになっている」と言ったらしいことは面白い。

宗教芸術というものもあるが、コリン・ウィルソンによると、芸術は宗教の下僕であり、宗教儀式の荘厳さといった演出のための道具であるらしい。しかし、荘厳にするには、そうしなければならない理由があったのであり、芸術は道具として有用であるわけだ。いや、それどころか、宗教というものが芸術の助けを借りなければ、本来の目的に達しないという見方もできると思う。本来の目的とは、真理に達するということだ。宗教と芸術が人間を真理に導くものと考えていたのはW.B.イェイツであると思う。だがそれは、キリスト教を超えた強者の宗教、超人の芸術であったと思う。彼もまた、ニーチェやワイルドと同様、アンチ・キリストではあったが、また、彼ら同様、イエスを特別な存在と認識していたと思う。ただ、人々のキリスト教に対する幻想に反抗していたとも思える。

幸福になるにはどうすれば良いかという問いに対し、「不幸になる要因を除けば良い」と答えた聖者がいたが、芸術による爆発を起させるには、爆発を妨げる要因を除けば良いのではないかと思う。つまり、幸福であるとか、輝く生命といったものはすでにここにある。爆発はいつでもスタンバイ状態であるのであり、真剣に求めれば爆発に達するであろう。爆発を妨げる要因は真剣でないことである。

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Comments

二本行きましたか!
師匠流石であります^^;

今度私のブログにリンク貼りたいと思いますが如何でしょう?

今夜もWで・・・

Posted by: ヒデピョ~ン。。 | 2007.11.17 at 02:36 AM

をを!ついに師匠に!(笑)

リンク、貼っていただきましたら、こっちからも貼ります。ラヴラヴリンクですね(違)。
ただし・・・そちらのブログの紹介文を私が勝手に作って良ければ・・・^^;;

Posted by: Kay | 2007.11.17 at 08:58 PM

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