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2007.08.31

肥後守に惚れる

Higonokami
最近購入した、「特別手作り青鋼本割込大」の肥後守(ひごのかみ)だ。
これほど美しいブレードを持つナイフはないと思うのだが。

前にも書いたが、私はこの2年ほど、ナイフに興味を持ち、和式、洋式、シースナイフ(主に皮製の鞘に納まるもの)、フォールディングナイフ(折りたたみ式ナイフ)、狩猟刀、渓流刀(釣り用)、マルチツールナイフ(多機能ナイフ)の様々なものを入手した。
そして、最終的に気に入ったのは、比較的安価なフランスのオピネルと、スイスのビクトリノックスであったと前に書いた。
しかし、試しに日本の伝統的ナイフである「肥後守(ひごのかみ)」を購入してみた。どうも私は、肥後守に偏見があったようで、興味を持っていなかった。しかし、買ってみると、これが非常に素晴らしかった。

ところで、面白いことに、肥後守は1890年代に製造が始まったらしいが、オピネルもその原型が出来たのが1890年、ビクトリノックス社がソルジャーナイフをスイス軍に収め始めたのが1891年と、いずれも1890年代がその起源になっている。

さて、肥後守であるが、私も子供の頃に持っていたことがあるので、どんなものか知らないわけではなかった。
真鍮あるいはアルミの板を曲げただけの、なんとも簡単なハンドル。刃のロック機構は一切なく、チキリと呼ばれる刃の尻尾のような部分を親指で押さえて使うという単純なものだ。ポケットナイフであるらしいが、ポケットに入れると、飛び出たチキリがポケットを破く可能性があるし、転ぶとチキリで怪我をするかもしれない。いや、それどころか、ロック機能が無いので、ポケットの中でも容易に刃が出てしまう。
しかし、それなら、ケースか袋に入れれば済むことだ。立派なケースである必要もない。何なら、布切れで包んでおけば良いが、それがいかにも肥後守に似合う。日本では、ナイフは携帯時、すぐに取り出せないようにしていないと、銃刀法あるいは軽犯罪法に問われる恐れがあるので、持ち運ぶ際には、布で巻き、紐で括っておけば良いと思う。
さて、このど単純な作りの肥後守であるが、私は、これほど刃の形状の美しいナイフを知らない。ガーバー社のシルバーナイトは美しいと思ったが、迫力では肥後守の方がはるかにある。それはより実用的な刃であるからだと思う。
ロック機構がないのは、別にいいじゃないかと思う。使い慣れると、むしろ無い方が気楽で良い。安全という意味では、安全なように注意すれば良い。ちょっと気を使えばできることでわざわざ何かを用意しない方が良いというのは、この世の法則でもあると思う。むしろ、多少危ないことで、ナイフというものの恐さを認識し、注意するよう意識することは良いことと思う。ところで、肥後守の単純さが問題を起したという話はあまり聞かない。

誰が考えたのか知らないが、チキリが付いたナイフは世界でも珍しいと思う。
肥後守は、切れ味の良い炭素鋼であるが、これはステンレスナイフと違い錆びる。しかし、チキリがあると、刃の開閉を行うのに刃を指で触る必要がないので、刃面に湿気を付けることが少なくなる。これが、オピネルであれば、刃を触らない限り、刃の引き出しはできない。オピネルも、現在は錆びないステンレス(イノックス)鋼のものもあるが、炭素鋼のものが本物と言えるかもしれない。
ただ、私はステンレス鋼が悪いというつもりもない。ビクトリノックス社のナイフは、その社名にイノックスが含まれるように、刃はイノックス鋼である。イノックス鋼と言っても様々であるようだが、ビクトリノックスは実によく切れる。腕や脚の多少細い毛でもすらっと切れるほどである。

私が購入した肥後守は「特別手作り青鋼本割込大」という、やや高級なタイプだ。
標準品より刃の厚みもあり、がっしりした感じである。上にも書いたが、やや細身の刃身は実に美しい。価格は、約5千円と、標準品よりやや高い。しかし、普通は標準品で十分と思う。
同じ刃身80ミリのモデルでは、標準品の肥後守とオピネルは共に千数百円で買え、安価と言える。ビクトリノックスはソルジャーナイフで刃身が65ミリ程度で、実際の購入価格は2千円を下回ると思う。

どれが一番というわけではない。用途に合ったものを使えば良いと思う。
オピネルはキャンプでは包丁代わりに快適に使えるが、この用途に肥後守を使う気にはならない(別に、その気になる人がいても構わないが)。
肥後守は、イメージとして工作用に向いていると思う。鍛え上げた切れ味の良い炭素鋼は木もよく切れそうだからだ。
ところで、ダンボール箱の荷物等の開梱や、封書を開けるのには何がいいかというと、私は小型のシースナイフばかり使うのに気が付いた。封書の開封には、いかにもシルバーナイトという小型のフォールディングナイフが向きそうなのだが、実に、刃を引っ張り出すのが面倒臭いのだ。小型シースナイフは、皮製のシースにとくにボタンを留めずにナイフを突っ込んでいるだけなので、簡単に抜き出せる。
ただ、オピネルは、刃を引き出した状態で放って置いても様になる気がする。これを家庭で肉や果物やパンを切るのに使う人がいるかどうかは知らないが、できなくもないと思う。
ビクトリノックスは、刃を引き出すのに力がいるし、爪でひっかけて引き出すので、真面目にやらないと爪を痛めかねないのはやや負担だ。ただ、精密かつタフで、デザインセンスも良いビクトリノックスはやはり持っていて楽しいものである。

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