本が足りない?
たまたま見ていたテレビであったのだが、ある小学校で、予算不足のため、図書館に置く十分な本が買えないという問題を取上げていた。
数が十分でなくて、コピーを取ったり、古い本しかなくて、最新の情報でないとかだった。
何人かの子供のインタビューもあったが、その中で女の子の生徒が現状の不満を言うのだが、いかにも自分が被害者であるような雰囲気であることが気になる。やらせとまでは言わないが、子供にそんな返答を期待する雰囲気はなかったか?あるいは、他の子供のインタビューもあったが、わざとあのようなものを選んで放送したのか?
本がないといっても、図書館にはそれなりの本があった。
本が足りないならコピーが使える。いったい何が不満なのだ?
すでにある本は十分に読んだのか?
新しい本がなければ何もできないのか?
考えれば考えるほど、何の問題もないことが分かる。
大島弓子さんの漫画だったと思うが、こんな短編があった。作者自身の子供時代の回想である。小学校も低学年の頃と思う。
その頃は、教科書を持っていない生徒もいたらしい(半世紀以上前の話だ)。
ところで、隣の席の男の子の教科書がちょっと変わっていた。なんと手書きの複製であった。当然、コピーなどない時代だ。それが、全ての教科書が、挿絵まで含めて見事に書き写されていて、非常に驚かされたようだ。
聞くと、お父さんが書いてくれたと言う。
教科書についてはそれ以上聞かなかったらしいので、詳しいことは分からないが、私は常識的な想像をした。
彼の家には、教科書を買うお金がなかったのだろう。
そこで、彼のお父さんは、教科書を持っている家を探し、親にそれを貸してくれるよう頼んだのだろう。子供と同じ学年の子供がどこにいるのかはすぐに分かったのだろうか?そして、頼めばすんなり貸してくれたかどうかは分からない。貧しい人間の頼みでもある。父親はペコペコ、いや、地面に頭をこすり付けて頼み込んだかもしれない。それでも、何度も断られたかもしれない。
なんとか貸してもらえたとしても、そんなに長い時間貸してくれるはずがない。ひょっとしたら、1つの家庭ではなく、いくつかの家から借りた可能性もある。
父親は、仕事の後に複製にかかり、不休でがんばったはずだ。子供が見たこととはいえ、見事な複製であったことから、父親はスピードだけでなく、できるだけ本物そっくりになるようがんばったことが分かる。睡眠時間をかなり削ったことは間違いがない。
小さい子供とはいえ、それを使って勉強する気持ちはいかなるものだったのであろう?
昔であれば、国民全体が貧しく、一般家庭では本のような生活必需品でもないものを買うことはなかなかなかったと思う。生活必需品すら不足し勝ちのはずである。
そこで、子供たちは、図書館や書店で本を見て憶え、家に帰って書き写すということをよくやったらしい。有名な南方熊楠は驚異的な記憶力で、完璧な複製を作ったらしいが、逆に言えば、こうやって記憶力を鍛えたとも言えるかもしれない。そして、当然知識も付くわけである。彼は、イギリスなどに留学した時も、図書館を利用し、複製作成に励んだらしい。
特に貴重であった辞書を複製したという話はよく聞く。勝海舟も、オランダ語の分厚い辞書を複製したが、それを貸してもらえるまでがまた大変であった。
これらの者たちは、本を豊富に与えられる現代の人たちに比べ劣るであろうか?むしろ、全く逆と思う。
かくいう私は、小さい頃から文学全集を用意してもらうなど、本の獲得に苦労したことはない。ただ、読まなかっただけだ^^;
よって、あまり説得力はないが(笑)、最低限の服や食べ物ならともかく、本を買ってもらえないこと、それも必要な本は与えられているのに不満を言うことなど容認するわけにはいかない。
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Comments
人間の「記憶」というものについて、根本的に考えさせるいい記事だと思います。近頃速読ということがしきりに言われていますが、私も読書は熟読しなければ本当に身に付かないと思います。自転車や水泳を覚えるのと同じように、同じ本を何回も何回も読んで、身体で覚えたものだけが本当に自分の血肉になるのだと思います。人間の身体はそのようにできています。
Posted by: 野崎 雄隆 | 2007.06.16 08:38 PM
野崎雄隆さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
私も、本の熟読、繰り返し読むことの大切さは、まことにその通りと思います。
特に良い本は、何度読んでも新しい発見があります。
ある人間離れしたような優秀な人が、成功する前に、1冊の本を12年かけ、綴じ糸も取れて本当にボロボロになるまで読んだという話を聞いたことがあります。
ところがよく、「私は何を読んだらいいでしょうか?」とか「私はこの本を読むべきでしょうか?」という、訳の分からないことを本当に聞いてくる人もいます。
読書以前の問題がある人も多いようです。
Posted by: Kay | 2007.06.16 11:39 PM