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2007.05.22

宇宙プログラム

中山正和氏の本が手に入りにくくなりました。
中山氏は少し前に亡くなられましたが、それにしてもこんな良い本が出版されなくなるのですから、日本の出版について考え直さないといけないように思います。

心理学では、さすがにいまどき、何でもかでもフロイトということはないですが、心のモデルとしては、フロイトが一応の標準のようです。
ただ、実際のフロイトは精神分析医であり、精神的な病人ばかりを相手にしてましたので、フロイトの心理学が病的であることは否めません。

フロイトの心や自我の説明は結構面白いものです。
まず、フロイトは、人間は本能が壊れた動物であると考えました。動物のように、本能に従っていればうまく生きられるというわけではありません。
そこで、本能の代替物として心が生まれ、心は意識と無意識に別れ、さらに自我が生まれました。しかし、自我は自然に根ざした実体のあるものではなく、幻想のようなものと言います。
日本では、心理学者の岸田秀氏がこの説を基に独自に発展させた「唯幻論」を唱え、人間は個人的あるいは集団的な幻想の中で生きているとしました。幻想はやはりなんら実体のあるものではなく、人間は、みな狂っているとしています。理解しやすく、また、いろいろな文化的実際をかなり説明できることから人気があります。

ところが、中山正和氏の考え方は違っていたように思います。
中山氏は科学者で発明家ですから、当然理系発想です。フロイトや岸田氏には理系発想はほとんどないように思われます。
本能というのは、コンピュータのプログラムのようなものと言って良いでしょう。動物の脳には、本能というプログラムが組み込まれ、普通は単純かつ正常に動作します。
人間には、動物の本能をはるかに上回る高機能・高性能なプログラムが組み込まれています。中山氏はこれを仮に「宇宙プログラムX]と呼んでいました。
このXがそのまま現れれば、完全な人間であり、それは天才です。しかし、通常、Xは歪みます。脳には、イメージ記憶という右脳管轄の記憶があります。しかし、人間は言葉を発明しましたので、コトバ記憶というものが生じ、これは左脳が管轄します。本来、右脳のイメージ記憶は、見たまま、聞いたままが記録されているのですが、左脳が言葉で嘘の記憶を与えると、これがイメージ記憶を歪めます。言葉は、勝手なイメージを作るからです。よって、正しいデータのみ集め、右脳のイメージをきれいにすれば正常な人間となるわけです。ただ、言葉を使う以上、完全にイメージ記憶を整然とさせることは難しいのです。
特に、抑圧という形でイメージ記憶を歪めてしまうと、なかなか厄介なことになります。その形態が深く形作られ、修復が難しいのです。

フロイトや岸田氏の説では、閃きや、マスローの「至高体験」を説明できません。
しかし、中山氏の理論では、イメージ記憶が一瞬、整然とした時に至高体験や閃き、あるいは、天啓のようなものを得ることになります。
ただの日曜音楽家が、名曲の誉れ高いフランス国歌「ラ・マルセーエーズ」を一夜にして作曲するようなことも実際に起こるわけです(実話です)。
私は、フロイトの自我は、中山氏のイメージ記憶に関係すると思います。言葉が自我を構築しますが、それを自分と勘違いするわけです。
真の自己とは、意識と呼ぶものに近いと考えます。意識は、美しいイメージ配列を通してXを感じることができます。これが至高体験と思われます。
意識の正体はよく分かっていません。ロジャー・ペンローズの「量子脳理論」では、脳の中のマイクロチューブルという小さな管のような機関での波動関数の収縮で意識が生起するとあります。証明はまだですが、意識が存在することは確かですので、それが自己であるかもしれませんが、自我は自己ではないと私は考えています。

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Comments

はじめまして、時々拝見しています。

心って、なんなんでしょう。
人間の意識活動の主体は言葉だと思います。
言葉が認識や思考のベースになっていますから。
けど、それが意識の正体とは一致しない気もします。
フロイトの考え方は偏っていたと思いますが、
現代の精神医学や心理学の大きな源となったのは
たしかなのでしょうね。
コフートの、自己愛をベースにした考え方が、
自分には現代にマッチしているように思います。


それと池田満寿夫についても詳しいご様子。
小説「エーゲ海に捧ぐ」というタイトル、
その数年前に、日本人作家による同名のブロンズ作品があるのですが。
ご存知でしたら、教えてくださると助かります。
↓これ人にもちょっと聞いてみたのですが判りませんでした。

http://yuhkiwind.exblog.jp/3910997

唐突に書き込みを失礼しました、では、

Posted by: yuhki | 2007.05.22 at 11:24 PM

yuhkiさん、はじめまして。
yuhkiさんのブログは読みやすくて清々しいですね。
私は、コフートは残念ながら、全く存じませんでした。
異端の精神分析学者とされ、アンナ・フロイトにも嫌われたようですね。
よく分かりませんが、現在は見直されているといって良いと思われますね。

心は、ハートと言ったりマインドと言ったりしますが、前者が愛というニュアンスがあり、後者は思考のような雰囲気があるように思います。
私は、心はある種のツールであり、知覚したものは心を通してしか認識できないので、心の状態というのは非常に重要だと考えています。
言葉を誤って用いると心を歪めるため、言葉の使い方は大切と思います。これは「正しい日本語」というよりは、事実をシンプルに表せる言葉が良いと思います。

「エーゲ海に捧ぐ」のブロンズ像のことは存じませんでした。
「○○に捧ぐ」という言葉はよく使われますので、偶然の一致かもしれません。
まあ、分かりませんが。

ではでは。

Posted by: Kay | 2007.05.23 at 06:46 AM

相変わらず、面白いッス。
難しいけど、知りたいところなんですよね。
心理学の本読んでも続かないから、私のこの方面の知識は全部Kayさん経由です。

これからも応援してます。

Posted by: lemoco-layco | 2007.05.23 at 10:56 PM

>lemoco-laycoさん

ありがとうございます。
しかし、心理学ほど怪しい学問はありません・・・と心理学者の岸田秀氏が著書に書かれていましたが、その岸田氏のサイトで、岸田氏の理論をケチョンケチョンにしてきました(笑)。
私は、身体も心も時間も空間も超えました。芸術は爆発だ!<最近暑いし・・・

Posted by: Kay | 2007.05.23 at 11:43 PM

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