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2006.08.02

ピカソ論

ピカソ論といえば、私は2つしか読んだことがない。
岡本太郎の「青春ピカソ」(新潮社)と池田満寿夫の「私のピカソ、私のゴッホ」(中央公論社)の第1部である「私のピカソ」だ(第3部は「私のモディリアーニ」が収録されている)。
岡本太郎はピカソと面識があり、割に気楽にピカソ邸を訪問できる間柄でもあり、よりピカソの実像に迫れたと思う。ピカソ論としてはあまり分からなかったが、岡本太郎の目を通したものとはいえ、ここまで直にピカソを生で捉えたピカソ論はそうないと思う。
一方、池田満寿夫はピカソに実際に逢ったことはない。そして、池田満寿夫自身が、それを書いた時点で、自分にはピカソが分かっているとは言えないと書いている。しかし、読んでみると、とてもそうは思えず、芥川賞作家の文章の力量もあろうが、実に情熱的で素晴らしいピカソ論で大変に面白かった。いや、岡本太郎の方も全く同じことが言える。
しかし、面白くはあったが、私には両方とも、そのはっきりとした意味はさっぱり分からない。
池田満寿夫の方で面白かったのは、岡本太郎について触れる時、「背の低い男」といった言い方をして、決して岡本太郎とは書かないことだ。しかし、岡本太郎のことであることは、少し岡本太郎の本を読んだことのある人なら分かる。だって、「ピカソをすでに乗り越えた」と宣言した背の低い男と言ったら、どう考えても他にはいない(笑)。
いったい池田満寿夫がなぜこんな書き方をしたかとなると、実際のところは分かるはずがないが、少なくとも私には岡本太郎への親しみは感じにくかったが、やはり実際のところは分からない。

ところで、池田満寿夫がピカソの「ゲルニカ」そのものと思ったのは、彼がテレビで見た、ベトナムで数多く発生したシャム双生児の死体のホルマリン漬けの遺体だったらしい。
シャム双生児といえば、最近では、10月に結婚する予定らしいクエン・ドクさんとその兄のベトさん、以前はベトちゃん、ドクちゃんと呼ばれた双子兄弟が世界的に有名であるが、多くのシャム双生児はすぐに亡くなる場合が多いらしい。その死体のホルマリン漬けであるが、池田満寿夫が心の底から恐怖したと言うように、まさにゲルニカを現実にしてしまったものと感じたようだ。
池田満寿夫は書いていた。「想像上のものなら、どんなものでも耐えられる。しかし、現実はそうではない」と。

尚、ピカソ自身が言っていることでもあるのだが、岡本太郎も池田満寿夫も、ピカソの絵が呪術的であることは、二人とも全面的に認めていると思う。
ただ、「絵は武器なのだ」と言ったピカソの言葉の解釈は二人は微妙に異なるように思う。
池田満寿夫は、ピカソは絵を力ある呪符のようにみなしていると書いている。これでもって、悪霊と戦う必要がピカソにはあったのかもしれないと。
岡本太郎は、優れた芸術そのものが呪術であると言っている。それは魂に突き刺さる強烈なメッセージである。
ところで、ピカソに関して日本の芸術家で欠かすわけにはいかないのは横尾忠則と思うが、横尾忠則の本はある程度読んだつもりだが、彼がピカソについてあまりしっかりと書いてあるのを見たことがない。しかし、彼は、ピカソの絵を見て、デザイナーから画家に転向したのであるから、その思い込みもさぞやと思うのであるが・・・。
ところで、横尾忠則は、岡本太郎について、「あまり芸術が呪術的であると言わない方が良いのに」と書いていたように思う。その本意は私には分からないが、どうも岡本太郎は若い(?)芸術家に好かれていないのかと疑ってしまう(これは冗談だが)。ただ、岡本太郎の「認めさせてたまるか」という反骨精神は、大芸術家相手にも有効なものらしいと感じる。

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Comments

「バカの壁」の最後あたりにピカソに関するパートがありました。
彼はああいう絵しか描けないのではなく、脳で故意に再構成しているという話でした。
先天的な能力だそうで、凡人たる私はただ驚くばかりです。
今まで意味が分からない絵でしたが、楽しみ方がなんとなく分かったような気がします。
とはいえ、説明があって初めて理解できるのなら、芸術センスがないってことなのでしょうが。
これまた仕方がないことです。

Posted by: 九賀コリン | 2006.08.02 at 09:29 AM

養老さんの本はある程度読んでいるはずなのに、最大のベストセラー「バカの壁」だけはなぜか読んでいません。妙なものだ^^;
ただ、養老さんの本は「唯脳論」だけで良いと思ったものですから。
ピカソの絵の形式はセザンヌによる自然の造形の実験を発展させたもので、ブラックとほぼ同時に完成させたもののようです。
ちなみに、私にはさっぱり分かりません。「バカの壁」でも読んでみよう。

Posted by: Kay | 2006.08.02 at 11:42 PM

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