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2006.08.05

芸術家に相応しい年の取り方

我々は、現在の職業を何歳まで続けることができるだろうか?
スポーツ選手は体力や反射神経が必要であり、これらが衰えると引退を余儀なくなれる。
医学や科学の進歩もあり、選手寿命が延びる傾向はあるように見えるが、それでも、一流の場合でも野球選手なら40代半ば迄、より運動量の多いサッカー選手は30代半ばあたりが限界のようだ。
音楽演奏家や歌手は、多少体力が衰えてもスポーツ選手ほどは致命的ではなく、高齢になるまで続ける人もいるが、やはり年を取ると実力は衰える。また、特に女性歌手の場合は容姿が人気に影響する場合が多いが、これもまた年齢と共に衰えるのはやむを得ない。47歳のマドンナが、全く年齢の不安を感じさせず人気も衰えないのは凄いが、いくらなんでも、後十年も続くことはない(続いたりして・・・^^;)。
芸術家はどうだろうか?
彫刻家としても抜群の才能と創作意欲もあった画家のモディリアーニが、体力を理由にやむなく彫刻を断念し絵画に集中したように、彫刻家は体力も必要らしい。ただ、健康なら、ある程度高齢でも創作を続ける作家はいる。
詩人は体力は必要としないので、かなり高齢でも才能次第でやれそうな気もするが、実は詩は(分野にもよるのだろうが)若くないとダメなものらしい。35歳を過ぎても叙情的な詩を創作したW.B.イェイツなどは例外中の例外と言われる。そこにいくと、小説家は高齢な人気作家も多いように思う。
科学者はどうか?
昔であれば、科学者といえば白髪のおじいさんというイメージがあったかもしれないが、創造的な仕事は若い人のものであると思う。かのアルベルト・アインシュタインも天才であったのは42歳頃までであったという。数学の分野では20代も最初の頃が勝負と聞く。

さて、いよいよ画家である。
ピカソが80歳をとおに超えても、創作意欲は全く衰えず、作品を量産し続けたことは有名だが、これほど極端な例でなくても、高齢でもすぐれた画家は珍しくは無い。
しかし、若い頃の作品は素晴らしかったのに、年齢と共にダメになった有名な画家もいる。
逆に、高齢になってから作品が良くなったという話はあまり聞かない。
岡本太郎は「年齢はまったく関係がない」と言ったが、根本的にはやはり若い方が有利な部分が多いに違いない。また、いわゆる精密な腕前を要求される分野では特に若い作家が有利であろうし、そのような分野でなくても、横尾忠則さんが体力の重要さをご自分のWebサイトで切々と書いておられたのを見たことがある。
画家と年齢といえば思い出すのは、中年になってから絵を始めたゴーギャンやアンリ・ルソーのことである。近代の芸術では、正規の美術教育が必ずしも必要がないことを示す良い例であるが、さらに竹久夢二となると、有名になってから美術学校に入ろうとしたが、大家の画家に「きみの絵は美術学校で学ぶとダメになる」と言われてやめたという話すらある。私個人も、エリートコースを来た画家の絵には興味はない。特に今後は、「絵しかできない」画家はダメと思う。
75歳で本格的に絵を始め、80歳で世に知られ、生涯に1600点の絵を描き、100歳でも素晴らしい作品を残した米国のグランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)がいる。技術的には大したことはないらしいが、誰が見ても心を打たれる絵である。それも、12歳で奉公に出されて親の家を離れ、農婦または農夫の妻として自然の中で何十年も懸命に働き、沢山の子供を育て、村の人達と親密な交際をし、ジャム作りや刺繍に励んだことが画家としての土台になっているに違いない。
美大(あるいは美大大学院)を出て画家に師事し、国内のなんとか展で入選し・・・なんて、個人的には気色悪い(笑)。
今後は、特にビジネスマンや研究開発職で大活躍して、社会や人間の真の性質を身体で感じてきたような芸術家の作品でないと受け入れられないように思う。芸術家よ、セールスマンになれ、会社を経営しろ、モノを作れ、そして、自分の人間としての非力さを骨の髄まで感じ、謙虚になってから芸術に挑め。

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Comments

こんにちは。美術家が長生きというのは嘘です。生き残った人が長生きだっただけ。盗作の和田画伯はあまり先が長いとは思えません。食えなくて早死にしたやつはまだ幸せ。画家として死んだわけですから。その影にいるのは筆を折ったやつ。絵描き崩れ。これが問題です。才能があると本人だけが信じていたやつ。そんなやつは葛藤の中で死んでいくんです。挫折の美術史を美術評論家はいちいち書きません。だから世間は知らないだけ。

Posted by: 蛾か? | 2006.08.05 09:36 PM

私は、画家一般が長命か短命かは全く存じません。
ゴッホやモディリアーニのように若くして死んだ人もいますし、長生きする人もいますし。
どんな世界でも、特に食べていける絶対数が少ない分野では、成功者の裏で数え切れないくらいの失敗者がいることもよく認識しております。どんな職業でも、そういったことが気まぐれに取り上げられることもありますが、画家に限らず、部外者からすれば何の興味もないのは同じでしょうね。
まあ、世間が厳しいのは別に画家の世界に限りませんね。

Posted by: Kay | 2006.08.06 12:34 AM

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