« 幻想の未来 | Main | ピカソ論 »

2006.08.01

ロボット3原則

今後、ロボットの用途が広がり、一般の人もロボットを使う機会ができるに違いない。
ロボットがより賢く強力になるにつれ、これの危険防止対策も必要だ。
映画でも、「A.I」や「アイ・ロボット」などの作品で、このあたりの問題をネタにしており、真面目に考えないとひどい目に遭うぞと脅しているが、必ずしも冗談ではない。
この問題の回避策としていまだ有名なのは、SF作家アイザック・アシモフ(1920-1992)が考えた「ロボット3原則」と思う。
これは、簡単に言うと、

1.ロボットは人間に危害を加えてはならない。
2.ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
3.ロボットは、上記2つに反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

である。
ところで、1993年にタツノコプロが製作した「キャシャーン」というアニメ作品がある。2004年に紀里谷和明さんが製作した映画「CASSHERN」同様、1973年のアニメ「新造人間キャシャーン」を基にしたものだが、これが素晴らしい作品である。
この中で、ロボット工学の権威である東光太郎博士は、BK-1号という優秀で強力なロボットに以下の命令を与えた。

1.汝は人間の命令に服従しなければならない。
2.汝は人間の生命を脅かしてはならない。
3.汝は地球を愛し、その環境を保護しなければならない。

すると、BK-1は、人類の征服を押し進め、人々の多くを収容所に押し込めて強制労働をさせた。脱走者など、反逆者は容赦なく殺した。
人類軍の反撃に対しては、その優秀なAI(人工知能)による戦略や武器開発で圧倒し、たちまち人類軍を壊滅させる。
そして、BK-1は宣言する。
「ドクター東、あなたの命令はことごとく実行されているぞ。人類は死滅することなく、永延にその種は存続する。我々ネオロイダー(新造人間)の慈悲深き配慮によってな」

つまり、人類が死滅しないよう、そして、地球環境を守るためには、人類に自由を与えてはならない。そのために必要な人類の殺害はやむを得ずと冷静・正確に判断した上でのBK-1の行動であったのだ。これには納得せざるを得ない。
アシモフのロボット3原則なんてものを、言葉通りに守ったら、かえって悲劇的な結果となるのは間違いない。
さらに、まるでBK-1は自らに納得させようとするかのごとくに続ける。
「人類は、母なる地球を汚し、お互い憎みあうことしかできない生き物ではないのか?しかし人類は自らの手で自分を罰することもできず、その役を俺に押し付けた。人類はこの俺を待っていたのだ。人類以上の絶対者であるこの俺を。俺は独裁者ではない。ましてや悪魔などではない!」
そこに、ついにキャシャーンが現れる。BK-1は断言する。
「悪魔は貴様だ!キャシャーン!」
なんというBK-1の説得力。キャシャーンに何か言い分があるのだろうか?
BK-1への反論は?視聴者はキャシャーンの言葉に期待する。そして、キャシャーンは言う。
「父の苦しみ、母の悲しみ、そして俺自身の憎しみのために、ブライキングボス(BK-1)、お前を倒す!」
BK-1の素晴らしい理念に対して、なんと浅はかなキャシャーン。なんとも個人的な動機。
こんなことで、キャシャーンは正義のヒーロー足りえるのか?
そして、両者の対決が始まる。
圧倒的なパワーで攻勢に出るBK-1。長い戦いでガタがきていたキャシャーンは叩きのめされ、フェイスガードも叩き割られる。
だが、ここで不思議なことが起こる。BK-1の中から東光太郎・・・キャシャーンこと東鉄也の父の声が聞こえる。
「よくここまで来た、鉄也。さあ、ブライキングボスを破壊するのだ!新造人間となったお前ならできる。いや、お前にしかできない」
BK-1の信念は東光太郎の意志から生まれたものだった。しかし、その東光太郎の意志が、鉄也にBK-1破壊を託した。
BK-1は言う。
「俺はお前たちを愛しているのだ。キャシャーン、いや、東鉄也よ、お前にも永延に生きる特権を与えてやる」
そして、ついにキャシャーンはヒーロー復活に相応しい宣言を行う。
「断る!お前の作った世界など、俺は欲しくない。俺は俺自身の手で新しい世界を作ってみせる!」
BK-1は最後の最後で愚かさを見せたのだ。

人間の幸せとは思い通り、自己の信念に従って生きることである。
相手が松下幸之助であろうが、王貞治であろうが、イエス・キリストであろうが、彼らの信念の中で生きるのは、どんな人間も絶対に楽しくはない。
このあたりは、「20世紀最大の詩人」W.B.イェイツが、戯曲「カルヴァリー」で、イエスを裏切ったユダの言葉として見事に表現している。
「イエスよ、俺はお前が神であることを疑ったことはない。それを証明するのに奇跡など必要なかった。俺がお前を裏切ったのは、お前が全能に思えたからだ」
俺はお前の笛で踊る猿ではない。ユダはイエスを裏切るより他はなかったはずだと私も思う。

|

« 幻想の未来 | Main | ピカソ論 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ロボット3原則:

« 幻想の未来 | Main | ピカソ論 »