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2006.06.01

人の美しい行為とは

人の行いの中で、最も美しいものはなんであろう?
私は「恩に報いる」ことではないかと思う。
この場合、恩を与えた方は忘れている場合もあるし、何より、恩に報いるということは、利益は先に貰っているわけであるから、それを返すだけのことであり、見返りは期待していないことになるはずだ。
こう考えると、恩に報いると言うのは非常に損な感じがするものと思う。「借りた金は返すのが当たり前」とはいえ、返さなくて済むならその方が良いのであり、貸した方は忘れているのに、わざわざ思い出させて返すようなものである。
しかし、もし人間の人格に尺度というものがあるなら、恩に報いることができるか否かではないかと思う。

仏典にこんな話がある。ある時、森が大火事になってしまう。すると、一羽のオウムが池に飛び込んでは燃え盛る火の上で羽ばたくことを何度も繰り返し、火を消そうとした。
神様が、「お前の行いは健気ではあるが、それしきの水が何の役に立つか?」と言うと、オウムは「長年、棲家を与えてくれた森の恩に報いたいのだ」と言った。感激した神様はオウムと協力して火を消した。
恩に報いようとする思いは神様をも動かすらしい。

CLAMPさん原作で、脚本もCLAMPさんが書いた「魔法騎士(マジックナイト)レイアース」というアニメがある。
敵の大ボスのザガートには、イノーバというザガートに忠実で有能な副官がいた。ザガートの配下の戦士達が次々にマジックナイト達に倒される中、イノーバは自分を元の姿に戻して欲しいと言う。イノーバはもともとは聖獣だったが、ザガートの魔力で人の形になり、ザガートに仕えていた。それがイノーバの最大の喜びでもあった。しかし、いまやザガートの危機に際し、より力を発揮できる聖獣の姿に戻りたいという。ザガートは断った。聖獣の姿に戻れば、二度と人の姿にはなれない。しかし、イノーバは引かない。ザガートは言う。「なぜお前はそこまで私に仕えるのだ?」
イノーバは「私がエメロード姫から贈られた聖獣であるという理由だけで今までお側に置いていただけた恩に報いたい」と言う。いまやエメロードはザガートの敵である。
ザガートはイノーバの望みを受け入れ、イノーバを恐ろしい聖獣の姿に戻す。
聖獣となったイノーバは強力で、3人のマジックナイト達は歯が立たず、敗れ去ろうとする。
しかし、エメロード姫がイノーバの弱点をマジックナイト達に教え、寸でのところでマジックナイトは勝利し、イノーバは滅びた。イノーバの最後の瞬間には、エメロード姫も嘆き、ザガートは動揺した。2人ともイノーバを深く愛していたのだ。

世間には、「成功する方法」だの「幸福を呼ぶ秘訣」だのを商売にする者が後を絶たない。しかし、恩に報いる心構えのない者が成功することは、ごく短期間の場合以外はないであろう。幸運の女神は律儀な人間が好きなのに違いない。

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