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2006.04.25

エスと自己暗示

フロイトの精神分析療法で、肉体上の症状が治ったということもあるが、それは特異な場合のことと考えられ、あくまで精神療法は心の病を治すものであった。
しかし、フロイトにエスの概念を与えたグロデックは、全ての病気は心因性であり、エスの作用と考えていたし、実際、精神分析療法で肉体的な疾患をかなり治癒させたらしい。もちろん、精神疾患も治したが、そもそもがグロデックは精神と肉体を別のものとは考えなかったようである。
医者ではないが、精神的な療法でやはり肉体的疾患の治癒にかなりの成果を上げた者として、エミール・クーエがいる。フロイトやグロデックよりほぼ10歳若いクーエは、薬剤師であり、精神分析療法に関しては知識がなかったかもしれない。クーエが使ったのは暗示療法であるが、医者が見離したような患者を奇跡のように治癒した話も伝えられている。
そもそも医者ではないクーエであるが、自宅の診療所には常に大勢の患者が訪れ、クーエは精力的に治療を行ったようである。ただ、クーエは報酬を全く求めなかったというから驚きである。

グロデックはフロイト同様、精神の抑圧を精神分析で発見し、患者に抑圧になっているものを自覚させることで治癒に導いた。しかし、クーエはそんなことはしなかった。
クーエは自分の治療は自己暗示であると言い、実は暗示に他者暗示は無いとする。他者から暗示を受けたように見えても、それを本人が受け入れ自己暗示にしなければ効果はない。
そして、自己暗示で最も重要なのは「一般暗示」であり、その他の「特殊暗示」は補足に過ぎず、無くても良いと言う。
一般暗示とは、聞いたことがあるかもしれないが、
「毎日、あらゆる面で、私はますます良くなっていく」
というシンプルな言葉を使うものであり、具体的な症状を取り上げて、例えば「腰痛が治る」とか「胃弱が治る」と言うのではなく、それら全てを含む「あらゆる面で」という言葉で代用するのである。
精神というものは、納得ができないことに関しては頑固に抵抗するものであり、「癌が治る」などと言うと、「そんなことがあるものか」と反発し、その反発が勝ってしまう。
しかし、一般暗示であれば抵抗は起こらない。
クーエは、一般暗示の言葉を眠る前に20回、起きた時に20回唱えよと指示する。
他には何もない。このクーエの自己暗示を利用した商売をする者は後を絶たないが、上にあげたことが全てであるのだから、他に付け足す必要は全くない。
一般暗示は、「全て」に関してのことであるから、病気からの回復もであるが、事業を成功させる能力や気力の向上にも効果があるとされる。
尚、ジョセフ・マーフィーの成功法則のような摩訶不思議なパワーが発揮されるといった馬鹿げた話はないので、あまり妙な方向にはいかないようご注意願いたい。

しかし、グロデックのエスのことを考えると、一般暗示により、もしエスと協調することができるとすると、ミラクルとしか思えないことも無いとは言わないが、やはりこういう話で儲けようとたくらむ連中には注意して欲しい。
このようなことで、誰かにお金を払う必要などは全くない。

ついでの話であるが、クーエの弟子が、言葉も理解できない幼児を暗示で癒す話がある。
言葉を解せぬ者が暗示にかかるとは変な話ではあるが、その幼児のエスと治療者のエスの交流と考えると、さほど不可思議とも思わない。エスの支配による、治療者の表情、声、なでたりさすったりの行為が幼児のエスに影響を与えるなら、効果もあるのではないかと思う。

今回は、グロデックとクーエを結びつけるという珍しい話であった(笑)。

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