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2006.04.02

愚かなロリータ

ナボコフの小説「ロリータ」をご存知だろうか?
米国作家ウラジミル・ナボコフ(ロシア出身)のこの小説は1953年頃に完成し、1962年には巨匠スタンリー・キューブリックにより映画化され、1997年にはエイドリアン・ライン監督で再び映画化されている。
小説や映画を知らなくても、ロリータ・コンプレックスと言われる少女愛好者の語源となったものと言えば、ほとんどの人が見当がつくと思う。

第2次世界大戦直後のアメリカが舞台と思うが、映画で見たところでは、一般家庭にも自家用車、テレビ、電気冷蔵庫があり、庭ではミニスプリンクラーで水を撒き、豊富な商品があるドラッグストアは現在のコンビニのようである。広い車道、ネオン、近代的ホテルや病院・・・極端に言えば、現在の日本とさほど変わらないような豊かさである。
映画制作者の意図しないことだろうが、私はアメリカの素晴らしさに驚いた(笑)。

文学者であるハンバートが、教授に赴任する大学に通うための下宿を探している時、下宿人を募集していたヘイズ夫人(未亡人)の家を訪れる。やたらハイで、おしゃべりで、早い話がアホな中年女であるヘイズ夫人にうんざりし、ハンバートは断る口実を考えるが、庭で日光浴をするヘイズ夫人の娘である11歳のドローレス(愛称がロリータ)を見て、ハンバートは激しく萌える(笑)。
「お嬢さんですか?」
「はい。しつけがなってなくて・・・。で、ハンバートさん。お部屋は借りていただけますでしょうか?」
「え?・・・あ、はい。もちろんです。よろしくお願いします」

ハンバートは9歳から14歳の少女の中にいる「ニンフェット」と名付けた特別な魅力のある少女を愛好している。ドローレスはみるからにニンフェットだったようだ。
ハンバートはここに住むようになってから、鍵付の秘密の手帳にドローレスに関する色々なこと・・・おそらくはエロチックなことが多いと思うが・・・を熱心に書いていく。

こう書くと、ハンバートはまさに倒錯者、変態と思われそうであるが、私は果たしてそうであろうかと疑問に思う。
普通ではないかと(笑)。
ハンバートはロリータに妙なことをすることもなく、立派な中年文学者の態度を取り続けていた。このままの日々が過ぎていれば、ひょっとしたら、特に何事も起こらなかったかもしれない。それなら、ハンバートは良識ある人である。頭の中で何を考えたってそれは別段構わないことのように思う。

ところで、このロリータは美少女ではあっても、タチの悪い子供である。そして、それは明らかにヘイズ夫人の責任である。
愚かな女ヘイズ夫人に育てられた愚かな娘ロリータ。これこそが、この作品の重要な骨子ではないかと思う。
ロリータはハンバートが自分に魅力を感じていることはなんとなく分かっていたと思う。それで、これまで母親と喧嘩する時はあきらかに分が悪かったが、なんとかハンバートを味方にしようとした(ヘイズ夫人とロリータは度々、下らないことで喧嘩していた)。
ハンバートは露骨にロリータの見方はしなかったが、彼女をかばったり、喧嘩に負けて泣いているロリータを慰めるという楽しい役目は大いに引き受けたようだ。

しかし、ハンバートにとっては嫌な現実が襲い来る。ヘイズ夫人はハンバートに自分との結婚か、ここを出て行くかを迫った。
ここらがハンバートの愚かな点である。美少女なら他にいくらでもいると早々に引き上げれば良かったのに、恋は盲目である(笑)。ハンバートはヘイズ夫人との結婚を承諾する。
あまつさえ、ヘイズ夫人はロリータを夏期キャンプに追い出し、新婚二人きりを満喫しようとする。嫌がり助けを求めるロリータだが、ハンバートにはどうすることもできない。
ハンバートにとっては、まるで詐欺であった(笑)。
実話を基にした話のはずだが、このお話はとにかく衝撃的なことが起こる。
なんと、ハンバートが熱心に書き記したロリータに関する(多分やーらしい)手帳がヘイズ夫人に見つかり、しかも、ハンバートは鍵をかけていなかった!(嗚呼!)
変な趣味をやるときには慎重にという教訓を教えてくれる(爆)。

今でも、彼氏の携帯に他の女の子のおかしなメールが残っていれば大問題に発展するが、そんなレベルではない。浮気相手は自分の娘(しかもまだ12)・・・いや、浮気どころか、最初からあちら一直線(笑)。自分のことはブタとかなんとかボロクソに書かれている。多分、この母娘を睡眠薬で眠らせ、母ブタはゴミ箱の横に放置して、ロリータにあんなことやこんなことをしようとした計画も書いていただろう(実行はしなかった)。

ハンバートは、俺は文学者だ、ちょっと身近なモチーフを使って小説を書くくらいのことはするさとか言い訳するが、いったんキレたアホは分別が効かないものである。
奈落の底に落ちる直前のハンバート。だが、ここで恐ろしい幸運(?)な出来事が起こる。
なんと、ヘイズ夫人が近所の男が運転する車に跳ねられ即死する。
ヘイズ夫人を跳ねた男は、ハンバートに震えながら謝罪する。「奥様が急に飛び出してこられ・・・」内心「でかした!」と思うハンバート(※こんなこと小説には書かれていない)は、超人格者の態度で彼に寛大さを示す。感激した男は、葬儀の費用の負担を申し出る。男は、自分が断るに違いないと思っていることはハンバートにだって分かっていた。しかし、ハンバートは「ありがとう!感謝します!」と申し出を受け、男は呆然とする(笑)。
偶然、ハンバートはロリータと父娘の関係を見事に確立してしまったのだ(恐ろしい・・・)。

小説といい、映画といい、ストーリーの面白さは抜群で(小説も映画も基本的に同じストーリーだが)、この後の展開も凄い(いや、本当の面白さはここ以降だ)。
映画は、さすがに巨匠キューブリックのが面白かったと思う。ロリータ役は、キューブリックの方は14歳のスー・リオン、ラインの方は16歳のドミニク・スウェイン。どちらもちょっと大人過ぎで、12歳の雰囲気はさすがになかった。また、あくまでアメリカ的美少女であり、日本人好みとは思えない。

ところで私は、小説の中、ヘイズ夫人の話で、ロリータは2歳の頃、ベッドからおもちゃを放り投げてヘイズ夫人に拾わせて喜ぶ性格の悪い子だったというところが気にかかった。
ヘイズ夫人は拾うべきでなく、拾ったとしてもロリータに返してはいけなかった。
このことで、ロリータは原始的ナルシシズムである、極端な自己重要感を強くし、他人の感情に疎い、自己中心主義のアホな娘になってしまった(もちろん、一時が万事で、何事もヘイズ夫人は同じようにやったのだろう)。

実は私は「ロリータ」は高校生の時に一読しただけであり、記憶違い、読み間違いもあるかもしれない。
また、その後ロリータがどうなったかも分からないが、本には書かれていたようにも思う。
ロクな死に方はしなかったように思うが・・・

20060331
久々のらくがきです。
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