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2006.02.18

世界的オカルト本

今は売られていないかもしれないが、「ヒマラヤ聖者の生活探求」(霞ヶ関書房)という面白い本がある。
内容を簡単に言うと、19世紀の終わり頃、アメリカの調査隊がヒマラヤ奥地を調査見聞した記録で、そこに住む驚くべき聖者達のことが書かれている。数百歳でありながら50歳くらいの容貌を保つ男の聖者がいれば、その母親はたぐい稀な美少女の外観であるという。
聖者達は流れの速い川の上を歩いて渡り、テレポーテーションで瞬間移動し、イエス同様、食物を空間から出現させる。
はては、イエスとブッダ(釈迦)が同時に出現するという大サービスもある。
著者のスポールディングは、自分達は科学的な訓練を受けた者達であり、ここに書かれたことは信じてもらわなくてもいいが事実であると書いている。
スポールディング達は、聖者達に、あなた達もわけなく自分達と同じことができると言われ、やがて、スポールディング達も奇跡の力を発揮し始める。
・・・そんなことが書かれている。

さて、スポールディングはなぜこのような本を書いたのか推理してみる。
彼は調査隊としてヒマラヤに行き、宗教の教祖のような人には会ったのかもしれない。もしかしたら、彼らにとても上手い奇術を見せられたことも考えられる。本には、エミールという聖者は、コップの水をたちまち凍らせたとある。インドでは、このようなものを見せる大道芸人は多かったらしいが、初めて見たスポールディング達は驚いたと思う。
さらに、エミールさんなどに、いろいろ面白い奇跡の話を聞いたのかもしれない。なんと言っても100年前の話である。現在ですら、アメリカにも日本にも迷信深い人は多いが、一見知的で科学的な人でもあっさり神秘を信じてしまうことは珍しくはない。それに、クリスチャンの聖典である聖書には、イエスの超能力話が満載であり、信者はそれを信じて疑わないのが原則であるから、キリスト教信者であるスポールディングがイエスに敬意を表した上での奇跡の話を信じたとしても何ら不思議ではない。

すっかりエミールさんのオカルト話を信じ、憧れたスポールディングは、自分は見てはいないが、「見たも同然」と思い込み、それを本に書いたと思われる。

スポールディングは自分を「科学的訓練を受けた」と言う。しかし、自分を科学的と思う人間が一番危ないのである。科学も一種の妄想に過ぎず、それが確固とした現実基盤と思い込んでいる人ほど、自分の妄想に気付かないのである。
(少し前は、物質は音速を超えると分子結合が破壊されるとか、1600メートルを5分以内で走ると即死するというのが科学的であった)
さらに、数百歳でも若い聖者達に「あなたもわけなく自分達と同じことができる」と言われたはずのスポールディングが、長命ではあったらしいが、老いて死んでいった。それでは話がおかしい。

この本を本当と信じて有難がる人も多いと聞く。
信じること自体にどうこう言うつもりもない。彼らを馬鹿にする人にしたって、どっちがレベルが低いともいえない程度のことを信じているのは間違いない。
大事なのは、信じても良いが、それを希望としないことである。つまり、生きる支えにしてはならない。それはもろい杖に過ぎず、遅かれ早かれ折れるものであるのだから。

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