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2005.12.14

もっと美しいもの~最高の美の発見法~

「もっと美しいもの」というのは、ガイナックスのアニメ作品「まほろまてぃっく」の第2章の副タイトルである。これは、作品中の台詞でもある。
戦闘用アンドロイドであるまほろ(外見は美少女というのは漫画の約束事だ)は製造後、船の上で初めて海に沈む夕陽を見て、その美しさに感激して飛び跳ねる。
側にいた、地球防衛組織総司令官の美里司令は「生まれてきて良かったろう?だがなまほろ、世の中にはもっと美しいものがあるぞ」とまほろに言うが、それが何かは言わず、まほろの中に疑問として残る。
時は流れ、美里司令は死に(不可抗力ではあったがまほろが殺した)、まほろは美里司令の息子である優(すぐる)と逃亡先である異国の海岸で寄り添って夕陽を見た時、まほろは悟る。
「美里司令が言われたことが分かりました。もっと美しいもの・・・それは好きな人と一緒に見る夕陽・・・」
二人は自然に口づけをかわす。

同じような状況を簡単に表現したアニメの歌がある。
人気アニメ「カードキャプターさくら」の2つめのオープニング曲である「扉をあけて」にある(作詞はきくこ)。

なんでもない小石でさえ 不思議だよね 宝石にかわる
一緒にね 見てるだけで

以上2つは、愛する人と一緒にいる幸せが人間の精神に強く影響を与えたものである。
現象としては似ているが、コリン・ウィルソンの自伝である「コリン・ウィルソンのすべて」に実に面白い例がある。
ウィルソンがほとんど浮浪者の生活を送っていた23歳の時のことである。ウィルソンは海をぼんやりと見ていた。傍らにいた恋人のジョイがあることをウィルソンに伝えた時、ウィルソンの視界の中で海の光景が大きく変容し圧倒するような美に変わる。ジョイが何を告げたかというと、妊娠の疑いが間違いであったということだった(笑)。

ところで、1つ重要な補足をしたい。
一番最初の例で、まほろは「好きな人と一緒に見る夕陽」が「もっと美しいもの」であると思った。しかし、これには、3つめのウィルソンの例と同じ種類の状況があった。
まほろと優は、敵に追われて逃亡する危険な状態での緊張状態にあったということだ。
ウィルソンもジョイが妊娠していた場合の困難を考え、緊張を強いられていた時だった。
つまり、「最高の美」を認識するためには、精神の集中とその後の弛緩が必要であるのだ。
実は、このことがウィルソンの著作で繰り返し述べられていることであり、たとえば、ロシア式ルーレット(拳銃に弾丸を1つ込めて弾奏をデタラメに回した後、自分の頭に銃口を向け引き金を引く)をやった時に感じる強烈な至福感や、いつ捕まって処刑されてもおかしくない状況の中で感じる不思議な自由感が取り上げられている。

恋人と一緒なのに、何をやっても楽しくない、何を見ても良いと思わない最大の原因は緊張感の欠如である。弛緩しきった精神にキラメキは訪れないのである。
いや、毎日が楽しくない、幸せを感じないというのも、やはり同様なのである。

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